得意の笑顔で沸かすメディア ページ20
「これで鏑木から何も連絡がなければ本当にタイムアップだな」
「例のドラマはどうするんです?」
「それはちゃんとやるよ」
ただ、とAは言葉を続け、幼馴染相手の気の置けない声とは一転して温度のない声になった。
「アイとはもう潮時かな」
「うわ」
「なんだ」
「切り捨てるの早過ぎません?まだアイと5年くらいでしょ。あの子まだ19ですよ」
「私は24だ。私のことだから30あたりできっと芸能界は飽きて辞めてる。10年も畑違いのアイドル1人をのんびり育成したりしない」
「アイのことも飽きると?」
否定しないAに、雷田はため息をつく。
「“A”はそうでもアンタは違うでしょ」
「……私よりきみの方が私のことを知ってるのは癪だな」
「僕も癪ですよ」
ふうとAは一息つき、立ち上がり雷田から荷物を受け取って搭乗口へ向かう。
ゲートまであと数歩というところで、息を切らした声が聞こえた。
「待ってAさん!」
振り返ると、そこには紫の六芒星の瞳がAの姿をとらえていた。
まさか直接来るとは思わなくて、Aは目を見開く。
アイの口からどんな言葉が出るのかと思いきや、Aの予想のどれとも違かった。
「“…向いてないそぐわないって。みんな五月蝿いなぁ。
ごめん、向き不向きがあるもんね。
知ってるよそんなこと”」
言葉ではなく台本だ。
鏑木がプロデュースするドラマに主演予定のAが言う台詞だ。
「“だってさ…向いてないって認めちゃったら…
ああホラ、もう…なんにもなくなったじゃんかぁ”」
芝居は「まあ下手ではない」レベル。
だがそれを遥かに上回る、人を魅了する力。
ちらほらと人が集まっていたが、アイの本読みであっという間に大勢の人間に囲まれて2人だけの空間ができた。
アイが緊張するのはこれが初めてだったかもしれない。
それほどに、この数秒間は長かった。
「“やめとけ。それ、下手すると立派な器物破損で犯罪になるぞ。一乃”」
Aが、応えた。
この事実にアイを含めた大勢の人間が湧き立つ。
その後も本読みは続き、アイの息が荒れ始めたところで一区切りついた。
「Aさん…私の芝居、どうだった?」
六芒星はギラギラと輝き、今にもAに食らいつかんばかりだ。
ずっと待っていたものが現れたような高揚に、Aはふっと微笑んだ。
「礼を言う、アイ。この国で私が助演をするのは初めてのことだ」
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HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» ありがとうございます!魔女ちゃんのお相手は誰になるんでしょう… (10月21日 22時) (レス) @page15 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 更新ありがとうございます!!作者さんの立ち位置が自分と似過ぎていて滅茶苦茶分かる!と思いました、丸。 (10月16日 22時) (レス) @page13 id: e0721d2717 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» 神作なんて光栄です!頑張ります。ふぉん鴉さんコメントありがとうございました。 (7月23日 12時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 自分の中での神作有難うございます。゚( ゚இωஇ゚)゚。これからも頑張ってください!応援してます(oˆ罒ˆo) (7月23日 6時) (レス) id: ecacc3dc55 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - らーさん» 頑張ります。らーさんコメントありがとうございました。 (7月22日 16時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HANON | 作成日時:2023年7月16日 1時