番外編___ ページ8
ーー
『……記憶障害、』
比較的可能性の高い説を絞り出す。
この症状はこれが初めてではない。
【嫌なことがあって、少し忘れているだけよ】
遠い昔、ぼくは大きな事故に巻き込まれてしまったらしい。
“らしい”と言うのも、ぼくにはそれ以前の記憶が全くなかったから。
だけど何一つ不便な事は無かったので特に気にすることでもなかった。
そう、
今思うと
“その事”に気が付いてさえいなければ
疑問を持たなければ
ずっと幸せだったのかもしれない
【“お母さん”達が付いてるからね】
偽物の歪な笑みに生じる違和感が積み重なり、
やがて真っ黒な疑惑となる。
嫌な気分になる前に、思考を止める。
気力も底を尽きたのか、3度も打ち勝ってきた睡魔に呆気なく負けそうになる。
山も終わったし久しぶりに休める。
頑張った。
よく頑張ったよぼく。
重たい瞼を完全に閉じきる刹那____
「寝てる??」
『っ、!?!?』
「おわっ!!?」
視界いっぱいに広がるのは彼女の顔。
反射的に起き上がる体はつい先程までの疲労しきった体と同じだとはとても思えない程。
「はははっ!あっぶな〜〜!
脳天ごっつんこするとこだったねぇ!!
ノックしたの、気付かなかったでしょ?」
『…………』
何とも言えない感情の中、確かに分かることは
虚しい程に眠気が吹っ飛んでしまったという事実だけだった。
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作者名:うぃっぷ | 作成日時:2020年10月11日 23時