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照れているのか、松本は頭を無造作に掻いて、荷物を放り出した。
「もう遅いから、フロ入って寝よう。疲れただろ?」
そういえば、本当にいろいろな事があった。大野は、疲れ果てている自分に気付くと、急に眠気に襲われた。
「あああ、もう眠そうな顔してる」
「んんん…ねみい」
「すぐ準備するから、頑張って起きてて!体冷え切ってるし、汗もかいたでしょ」
「んー…」
ふらふらする大野のコートを脱がせ、ソファに座らせると、松本は大急ぎでバスタブにお湯を張った。
「ほら、しゃんとして」
バスタオルを渡すと同時に、いたずらっ子のような顔で松本は付け加えた。
「一人で入れないなら、一緒に入ってやろうか?」
「ひ、ひひひ一人で入れる!」
真っ赤な顔で、脱衣場から松本を追いやった。笑い声が聞こえた。
「ヘンタイ!バーカ!」
悔し紛れに叫んでみたが、笑い声が大きくなっただけだった。
なんだか見たこともないシャンプーやらボディソープで、さっさと洗い、湯船に浸かると、気持ち良過ぎてうとうとして、少し溺れた。
「ありがと…ほかほかになった」
風呂場から、濡れた髪を拭きながら出てきた大野のTシャツから伸びた腕に、松本の視線が釘付けになった。
冬服の上からしか触れたことの無かった、素肌の腕に、不埒な気持ちが湧きそうになった。
「ド、ドライヤー、ここだから。ちゃんと乾かして。眠かったら先にベッドで寝てていいよ」
松本は、少しぎくしゃくしながら、風呂場へ向かった。
「オレ、ソファでいいよ」
「まさか!俺ん家ベッドはでかいから平気だよ」
服を脱いでいるのか、くぐもった声だった。カチャカチャと、ベルトのバックルが鳴った。
「へ?平気って何が?」
シャワーの音がなり、答えは無かった。
大野は早くなった鼓動と共に、奥の部屋を覗いた。最小限の家具はシンプルだが、カーテンと色合いを合わせてあって、やはりお洒落だ。リネンの色も同色で、リラックスできそうだ。とても自分の部屋と同じ間取りとは思えない。大野の部屋はシングルベッドの周りにフィギュアやら絵具やらが散乱して、狭苦しい。
それは置いといて、ベッドの大きさだった。
「これってダブルベッド…」
肩からバスタオルが落ちた。
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1980love(プロフ) - 美しいmさんの顔も、可愛いoさんも幸せそうな二人も。たくさんの場面が目に浮かびました。mさんのために自分を大事にしたいって思うように変化していくのがとてもキュンキュンしました。一緒に暮らし始めたふたりが末永く幸せでありますように…。 (2020年4月14日 12時) (レス) id: e576671ee9 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 青龍葵様 読んで下さって有難うございます。カレーとシチューの時間軸が違うので、別の日になってるので間違っては無いのですが、字数の制限で詳しく説明が入れれなくて理解し難い書き方になってしまって、申し訳ありません(汗) (2018年10月4日 1時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 初めまして!素敵な作品で思わず一気に読ませて頂きました。また今後の活躍(MO小説)を楽しみにしてますw ※一部、誤字がありました。P82では「カレー」表記が、P84、P89では「シチュー」になってるので訂正お願いします。 (2018年10月3日 2時) (レス) id: 92632a3282 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 出遅れコメント 失礼いたします。かのお二人のお姿 お声 しっかり届き 溺れ 読ませて頂きました!そして何度も繰り返し読ませて戴き 癒されております。またの作品を楽しみにしています!あ〜ハイボールも美味い です! (2018年6月8日 19時) (レス) id: 6d8377daa0 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 波智様 そ、そそそんなに褒められると穴掘って冬眠しそうです!今回は特にややこしい事抜きで、素直なラブストーリーを描きたかったので、楽しんで頂けてホッとしております。読んで下さって有難うございます。 (2018年5月31日 22時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:斑野 ニケ | 作成日時:2018年5月26日 15時