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底に紙の感触があったので、取り出すと、
“ミツケタ コノマエハ ザンネンダッタ”
と、レシートの裏に、掠れたボールペンで書いてあった。
松本の背筋に、冷えた戦慄が走った。大野が呟いた。
「住んでるとこ…バレた…」
松本は辺りに人が居ない事を確認すると、大野を引っ張って、自分の部屋に入れた。
「きっと、この前のヤツだ…公園で襲ってきた…」
その時の恐怖を思い出したのか、大野の体が震え始めた。
「大丈夫、大丈夫!俺が守るから。ほら、俺の顔見て」
大野の肩を掴んで、向き合った。大野が恐る恐る視線を合わせると、そこには闘う前の戦士のような凛々しい目をした松本が居た。だが、口元には優しい微笑みを浮かべていた。
「命を賭けて、守るから」
ふんわりと抱き締められ、大野もその背に腕を回した。
「うん…」
あやすように、背中をぽんぽんと叩くと、大野の体から力が抜けた。松本は、そっと離れた。
「このまま部屋に帰るのは危ないな。今夜は俺の部屋に泊まって、どうするかは、明日考えよう」
「え?ウチ入れないの?」
「寝てる間に来ちゃったら、どうすんの!」
大野は唇を指で摘まんで、少し考えた。
「フロも?」
「うん」
「寝るのも?」
「だろうね」
大野の眉根が寄った。
「緊急事態なんだから仕方ないでしょ。取り合えず、見張ってるから必要な物だけ持ってきて」
松本は、外に誰も居ないことをドアの隙間から確認すると、「灯りを付けないで」と大野に囁いた。
スマホの明かりを頼りに、大野は着替えを丸めて、紙袋に詰め込んだ。暗闇の隅に、あの恐ろしい男が潜んでいそうで、怖かった。
すぐさま外に出ると、松本の背中があった。
「もういいの?」
「うん」
慎重に鍵をかけ、松本の部屋へと飛び込むように入った。
松本は、重い音を立てて内鍵をかけて、手探りでライトをつけた。
「わー、なんかドラマに出てきそうな部屋」
リビングは、色を抑えた家具で統一され、洗練されている。テーブルの上にある積みあがった本ですら、小道具のように見える。
「友達にインテリアコーディネイターが居て、安く買い集めた家具を適当に置いてってくれただけで…俺、めんどくさがり屋だから」
「イケメンの部屋って感じ」
「バカ」
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1980love(プロフ) - 美しいmさんの顔も、可愛いoさんも幸せそうな二人も。たくさんの場面が目に浮かびました。mさんのために自分を大事にしたいって思うように変化していくのがとてもキュンキュンしました。一緒に暮らし始めたふたりが末永く幸せでありますように…。 (2020年4月14日 12時) (レス) id: e576671ee9 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 青龍葵様 読んで下さって有難うございます。カレーとシチューの時間軸が違うので、別の日になってるので間違っては無いのですが、字数の制限で詳しく説明が入れれなくて理解し難い書き方になってしまって、申し訳ありません(汗) (2018年10月4日 1時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 初めまして!素敵な作品で思わず一気に読ませて頂きました。また今後の活躍(MO小説)を楽しみにしてますw ※一部、誤字がありました。P82では「カレー」表記が、P84、P89では「シチュー」になってるので訂正お願いします。 (2018年10月3日 2時) (レス) id: 92632a3282 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 出遅れコメント 失礼いたします。かのお二人のお姿 お声 しっかり届き 溺れ 読ませて頂きました!そして何度も繰り返し読ませて戴き 癒されております。またの作品を楽しみにしています!あ〜ハイボールも美味い です! (2018年6月8日 19時) (レス) id: 6d8377daa0 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 波智様 そ、そそそんなに褒められると穴掘って冬眠しそうです!今回は特にややこしい事抜きで、素直なラブストーリーを描きたかったので、楽しんで頂けてホッとしております。読んで下さって有難うございます。 (2018年5月31日 22時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:斑野 ニケ | 作成日時:2018年5月26日 15時