トナリに越してきたマツモトです【MO】後編

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「松潤はぁ？」

「ん？ん…８月３０日」

「あっつい盛りだな」

「でも俺、夏生まれだからかな、断然夏が好き」

「オレも。おっきい入道雲が好き。夕立の匂いとか、なんか子供の頃思い出すから好き」


松本がくすくすと笑った。


「あ…今、変なヤツだと思ったんだろ」

「違うよ」

「いーや！思ったね。だいたいみんなこーゆーこと言うと…」

「かわいいなって思ったんだよ」


大野は数度瞬きをした後、顔を真っ赤にした。


「そういうとこ、かわいくて、俺好きだよ」


下を向いて、もにょもにょと言葉にならない呟きをして、


「へ、変なの」


と、唇を尖らせて照れるので、松本は、追い打ちをかけた。


「かわいい」


すると、頬を膨らませて、真っ赤な顔で反撃しようとするので、ご機嫌を損ねないように、謝った。


本当はもっと言いたかったが。


坂を上り切ると、朧げに浮かび上がる白い建物が見えた。


階段を上がると、３つ並んだドアが常夜灯のお陰で見える。


「明日休み？」

「土曜だもん」


離れ難かった。だが、そのきっかけが見つからない。


「あ、あのさ、大野さん」

「う、うん」


口実を頭の中で巡らせている時、大野の部屋のノブに何かが、ぶら下がっているのが見えた。


「あれ、何？」


二人でドアの前まで行き、腰を曲げて眺めた。


よくある、小さめの白いレジ袋だ。


大野は、ひょいと手に取ると、中身を見た。


「五十嵐さんが何か差し入れてくれたのかな」


その大野の眉間に珍しく皺が寄った。


「布？……わああ！」


摘まんだそれを、大野は床に落とした。


「パ、パン…ッ」

「どしたの？」


花束を脇に挟んで、松本は、大野がおとしたものを拾い上げ、広げた。


「なんだこれ！」


細長く見えるそれは、脇が１ｃｍも無いビキニタイプの下着だった。立体裁断がやけにリアルで、セクシーを通り越していた。


大野が怯えた目をしたので、松本はすぐさまそれを、ビニール袋に突っ込んだ。

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