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辺りを警戒して、大野の部屋のドアノブに何も無いことを確かめて、自分の部屋の鍵を開けた。

「ただいま」

「おかえりー」とリビングから聞こえた。


明るい部屋に帰ってきて、おかえりを言ってもらえる幸せを噛み締めながら、洗面所で手を洗い、キッチンに向かった。紙袋は、キッチンの端に置いた。


「智、コーヒー飲む?」

「飲むー。そのコーヒーメーカー使い方分かんねーんだもん」

「そっか、ごめんごめん。これミル付きだけど、粉も使えて…あれ?」


粉を掬って、松本が気付いた。


「この花、洗面所に置かなかったっけ」

「オメエ、ちゃんと水切りしてねーから、ちゃんと水吸えてなかったじゃん」


細い花瓶に、窮屈に挿してあったはずの花は、短めに切られ、バランス良く広がって、華やかになっていた。


味気ない対面キッチンが、途端に明るくなっている。


さすが、大野のセンスは花も魅力的に生けることができるのか、と松本は感心したが、花瓶に見覚えが無い。


「この花瓶どうしたの」


大野は唇をむにゅむにゅと動かして、言葉を濁した。


松本の眉尻が、上がった。


「外出るなって、言っただろ!」

「ほんの1分程だもん。昔デッサンに使ってたの持ってたの思い出して」

「1分でも10秒でもダメ!ああ、もう!」


松本は髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜて、がっくりとキッチンに手を突いて、項垂れた。


そして、そのまま動かなかった。


大野は、黙ってリビングのソファに丸まった。


沈黙を、松本の大きな溜息が破った。


暫くすると、コーヒーメーカーが稼働する微かな音が鳴った。


松本は、一向に口を開こうとしなかった。


自分の軽率な行動に、松本は怒ったか、呆れたかしたのだ。大野は、体を縮こませて、沈黙の重さに耐えた。


ふいに、鼻先に挽きたてのコーヒーの良い香りが漂ってきた。大野は顔を上げた。

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1980love(プロフ) - 美しいmさんの顔も、可愛いoさんも幸せそうな二人も。たくさんの場面が目に浮かびました。mさんのために自分を大事にしたいって思うように変化していくのがとてもキュンキュンしました。一緒に暮らし始めたふたりが末永く幸せでありますように…。 (2020年4月14日 12時) (レス) id: e576671ee9 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 青龍葵様 読んで下さって有難うございます。カレーとシチューの時間軸が違うので、別の日になってるので間違っては無いのですが、字数の制限で詳しく説明が入れれなくて理解し難い書き方になってしまって、申し訳ありません(汗) (2018年10月4日 1時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 初めまして!素敵な作品で思わず一気に読ませて頂きました。また今後の活躍(MO小説)を楽しみにしてますw ※一部、誤字がありました。P82では「カレー」表記が、P84、P89では「シチュー」になってるので訂正お願いします。 (2018年10月3日 2時) (レス) id: 92632a3282 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 出遅れコメント 失礼いたします。かのお二人のお姿 お声 しっかり届き 溺れ 読ませて頂きました!そして何度も繰り返し読ませて戴き 癒されております。またの作品を楽しみにしています!あ〜ハイボールも美味い です! (2018年6月8日 19時) (レス) id: 6d8377daa0 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 波智様 そ、そそそんなに褒められると穴掘って冬眠しそうです!今回は特にややこしい事抜きで、素直なラブストーリーを描きたかったので、楽しんで頂けてホッとしております。読んで下さって有難うございます。 (2018年5月31日 22時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:斑野 ニケ | 作成日時:2018年5月26日 15時

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