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洗濯機の回る音が、遠くからした。


煩いということだけを、微睡んだ脳が拾い、布団に潜り込んで、再び眠りの底へと落ちようとした。


「まだ起きないの?」


拗ねた声が、すぐ傍で聞こえた。


「寝かせとこうと思ったけど、もうお昼になっちゃうよう」

「え…もうそんな時間?」


上体を起こした松本だったが、脳が動かなくて、そのまま突っ伏した。


「あーあ、ほんと朝弱いね」

「んー…昨日あれから電話来て…2時間話してた」

「え、しんど。2時間も喋れねーわオレ。もうちょっと寝てる?」

「うんん。もう目が覚めた」


目を擦った向こうに、下唇を噛んだ、変な顔をした大野が居た。


「変な顔」

「だって、にやけちゃいそうなんだもん」


甘い気分を、電話に台無しにされた松本だったが、大野は昨夜の幸せが続いているのだ。抱き締めた。


「おはよう、智」


シャワーを浴びたのだろう。まだ少し髪が濡れていた。


「おはよ…松潤」

「ジュンじゃないの?昨夜はそう呼んでたじゃん」

「それは、オメエがそう呼べって…言うから」


その時のシーンが思い起こされ、顔が火照った。


「…昨夜はありがと。着替えさせてくれて」

「大した事じゃないよ。あ、なんかいい匂いがする」


大野はキッチンの方へ顔を向け、


「昨日の鍋で、おじや作ったの。絶品だよ。はやく顔洗ってきて」

「うん」


完全に、同棲中の恋人同士の会話だ。松本は、心の中でガッツポーズをとった。


絶品のおじやを食べて、洗濯物を干した。ありきたりで静かな日曜日の昼下がりが、穏やかに流れていく。


寝そべって漫画を読んでいた大野が、不意に気付いて口を開いた。


「昨日、ポスト見るの忘れてた。なんか来てないか見て来ていい?」

「いいわけ無いじゃん。俺が行ってくるよ」

「なんか、悪ぃな」

「智は大人しく大事にされてなさい」


眉尻を上げた松本にそう言われると、擽ったい幸せが広がる。


自分は今、大好きな人の大事な人なのだ。



大野は、漫画で顔を隠して、寝転んだまま、ごろごろと転がった。

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1980love(プロフ) - 美しいmさんの顔も、可愛いoさんも幸せそうな二人も。たくさんの場面が目に浮かびました。mさんのために自分を大事にしたいって思うように変化していくのがとてもキュンキュンしました。一緒に暮らし始めたふたりが末永く幸せでありますように…。 (2020年4月14日 12時) (レス) id: e576671ee9 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 青龍葵様 読んで下さって有難うございます。カレーとシチューの時間軸が違うので、別の日になってるので間違っては無いのですが、字数の制限で詳しく説明が入れれなくて理解し難い書き方になってしまって、申し訳ありません(汗) (2018年10月4日 1時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 初めまして!素敵な作品で思わず一気に読ませて頂きました。また今後の活躍(MO小説)を楽しみにしてますw ※一部、誤字がありました。P82では「カレー」表記が、P84、P89では「シチュー」になってるので訂正お願いします。 (2018年10月3日 2時) (レス) id: 92632a3282 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 出遅れコメント 失礼いたします。かのお二人のお姿 お声 しっかり届き 溺れ 読ませて頂きました!そして何度も繰り返し読ませて戴き 癒されております。またの作品を楽しみにしています!あ〜ハイボールも美味い です! (2018年6月8日 19時) (レス) id: 6d8377daa0 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 波智様 そ、そそそんなに褒められると穴掘って冬眠しそうです!今回は特にややこしい事抜きで、素直なラブストーリーを描きたかったので、楽しんで頂けてホッとしております。読んで下さって有難うございます。 (2018年5月31日 22時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:斑野 ニケ | 作成日時:2018年5月26日 15時

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