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花束を膝に乗せ、愛おしそうに撫でて、松本は言った。
「ホントはさ、アンタをここに誘って、言いたいことがあったんだけど…」
前髪をぐしゃぐしゃと掻いた。
「人としてサイテーだろ?付き合ってた女に文句言われた挙句ビンタとか」
宥めようとする大野の言葉を遮って、続けた。
「それなりに、好きだと思ってたんだけど、なんか、こう…違うなってなるんだよ。結局仕事の方が楽しいし」
「うん」
「そっち優先になって…」
「松潤は、仕事が大好きなんだよ。だから、あんなすごいお芝居を作れるんじゃん。松潤は、お芝居に恋してんだよ」
ふふと笑って、大野はぶらぶらさせる自分の足に視線を移した。
「でも、やっぱモテんだなー。キレイな人だったな」
「少しも嫉妬…しなかった?」
大野は、きょとんとした顔を松本に向けた。
「あの、あのさ、俺さ…」
「うん」
「大野さんのことが…好きなんだけど」
微かに首を傾げて、頷いた。
「その…恋愛対象として…アンタのことが好きなの」
少し間があってから、大野の顔が真っ赤に染まった。
「え?な、なんでオレ?え?なんで?」
「キスして、アンタの事好きだって自覚して…でも迷惑だろうから、気持ちをアンタに押し付けるつもりは無かったんだけど、やっぱり好きな気持ちが止めらんなくて…できれば真剣に俺のこと考えてくんないかな…」
大野は唇を動かして、言葉を出そうとするが、空気だけが抜けて行った。
「大野さんはやっぱりマルスがいいの?俺じゃダメかな」
珍しく自信無さげな声は、消え入りそうだった。
「オ、オレ!」
ようやく出た大野の声は、裏返っていた。
「松潤がオレのこと好きって言ってくれてから、すごく嬉しくって。でもそれって変わってるオレに興味があるくらいかなって、松潤は誰にでも優しいんだろなって。こんな優しい人に出会えて、幸せだなって思ってた」
一生懸命、言葉を探す大野を、松本は見つめた。
「だから、それだけで幸福だから。もうこれ以上望めないくらい幸福だから。だって、松潤にはもっとお似合いな人が居ると思うし。オレ…男だし。あんなすごいお芝居作る人とオレ一緒に居ていいのかな…って」
「大野さんは、俺が好き?嫌い?愛してない?」
それは、至極簡単な想いなのだ。松本にとって大切なのは、二人の、世界の何もかもを消し去った、二人の想いだけだった。
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1980love(プロフ) - 美しいmさんの顔も、可愛いoさんも幸せそうな二人も。たくさんの場面が目に浮かびました。mさんのために自分を大事にしたいって思うように変化していくのがとてもキュンキュンしました。一緒に暮らし始めたふたりが末永く幸せでありますように…。 (2020年4月14日 12時) (レス) id: e576671ee9 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 青龍葵様 読んで下さって有難うございます。カレーとシチューの時間軸が違うので、別の日になってるので間違っては無いのですが、字数の制限で詳しく説明が入れれなくて理解し難い書き方になってしまって、申し訳ありません(汗) (2018年10月4日 1時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 初めまして!素敵な作品で思わず一気に読ませて頂きました。また今後の活躍(MO小説)を楽しみにしてますw ※一部、誤字がありました。P82では「カレー」表記が、P84、P89では「シチュー」になってるので訂正お願いします。 (2018年10月3日 2時) (レス) id: 92632a3282 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 出遅れコメント 失礼いたします。かのお二人のお姿 お声 しっかり届き 溺れ 読ませて頂きました!そして何度も繰り返し読ませて戴き 癒されております。またの作品を楽しみにしています!あ〜ハイボールも美味い です! (2018年6月8日 19時) (レス) id: 6d8377daa0 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - 波智様 そ、そそそんなに褒められると穴掘って冬眠しそうです!今回は特にややこしい事抜きで、素直なラブストーリーを描きたかったので、楽しんで頂けてホッとしております。読んで下さって有難うございます。 (2018年5月31日 22時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:斑野 ニケ | 作成日時:2018年5月26日 15時