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今日は、舞台のチケットが刷られて届く日だった。
全員が手に取って、感嘆の声を上げていた。
松本も、初めて自分が脚本演出した舞台のチケットを感動と共に眺めた。
座席は、以前からお願いしていた、とっておきの場所だ。それを確認して、まっさらな封筒にそっと入れた。
頬が緩むのが止められない。
当然、そんなイケメンの様子を見逃す者など居らず、
「松本、なんだ彼女にでも渡すのか」
先輩が、にやにやとわざと大きな声で言った。気にしつつも、敢えて見ていない振りをしていた仲間達の視線が、一斉に松本に集まり、騒ぎ始めた。
「やっぱ彼女居るんだ」
「えーショックゥ」
好き勝手な詮索に、そそくさと大切なそれを鞄に隠し、
「ちげーわ！バーカ！」
と、言い返したが、顔が真っ赤だったので、否定になっていなかった。
「じゃ、か、帰るから。また明日な」
「彼女によろしくなー」
声の主に、近くにあった新聞紙を丸めて投げた。
「イッテ！」
握力全開で握ったそれは、良い音を立てて、額にヒットした。
背をむけた松本は、片手でガッツポーズを取って、出て行った。
駅に着いてから、携帯でメールをした。
通勤ラッシュの中で、同じ車両に乗り合わせるのは難しい。
時間を合わせて、ホームで落ち合って、次にやってくる電車に乗る。
人混みの中で互いを探す行為は、会いたい気持ちを増幅させる。見つけた時は、不思議な喜びと安堵を感じる。
大野も、松本の顔を見た瞬間、輝くような笑顔をしたので、同じ想いだろうか、と自惚れてしまう。
喧噪とアナウンスの中、列に並んだ。
「今日も混んでるね」
「ふふ…そだね」
何気無い会話も、どこか浮かれていた。
ホームに電車が滑り込んでドアが開かれると、出る者と入る者で、列が乱れ、人の波が多方向へと流れた。
はぐれないように、松本は大野の腕を掴む前に、コートの腰辺りに感触があった。大野が松本のコートを掴んだのだ。その重みが、嬉しかった。
人の群れに押され、車両に押し込まれると、身動きが取れなくなった。松本は朝と同じように、大野の腰に手を回し、背に手を置いて、身の内に置いた。
絶妙に、その手が死角に入るようにしているところが、憎い。一駅ごとに体の位置が変わる度、回り込み、大野の背中が、安全な方向に向くようにするのだ。
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波智(プロフ) - ニケさん、お久しぶりですね。新作楽しみお待ちしておりました。何回も読み返していてコメントが遅くなってしまいました。このお話もすごく面白くて好きです。サトシくんを全力で守ろうとするジュンくんがカッコイイ。今から後編読みにいってきます。 (2018年5月28日 22時) (
レス) id: 9aff2b762e (このIDを非表示/違反報告)
智雪(プロフ) - 初めまして、智雪です。この設定、ストーリードキドキワクワクしてます。後半も楽しみにしてます。素敵なお話ありがとうございます。 (2018年5月27日 9時) (レス) id: 3739857cfc (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - あみ様 ビール三杯有難うございます。さとちのまつゆん呼びは外せませんでした(笑)後半は今日アップ予定です。四杯目になればいいのですが(苦笑) (2018年5月26日 11時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - ニケさん 潤くんの天然さ とさとっさんのまつじゅん呼びで ビール三杯いけそうです。後半も楽しみにしています！ (2018年5月24日 18時) (レス) id: 6d8377daa0 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - くま様 楽しんで頂けて、とても嬉しいです。無自覚な人たらしと、自分が傷ついても正直に真っ直ぐに生きる二人はリアルでもそうですもんね。後編も楽しんで頂ければ、幸いです。 (2018年5月21日 0時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：斑野 ニケ
| 作成日時：2018年5月19日 17時
