２３ ページ23
「好きになったってことだろ、そいつの事。いいヤツだから」
「うん、まあ…」
「良かったじゃん、そういうヤツに出会えて。お前にはそういう友人必要だと思うぜ。真面目過ぎて仕事の事ばっか考えてっし、社交的で一見人懐っこそうだけど、実は潔癖症で、自分の中に絶対立ち入らせない場所を持ってるだろ。いつもお前どっかに力入ってんだよな。よく疲れねえなって思うもん」
見抜かれている。呼ばれて去って行く同期の背中を、呆けた顔で見送った。
松本は無造作に髪を掻いて、ノートに視線を落とした。
どうにもつまらない、胸に落ちないシーンがあった事に考えを巡らせていたことを思い出した。
なにかもっと感情を動かせる演出があるはずだ。脳の中の情報を掴もうと闇雲に手を伸ばすが、それらはふわふわと擦り抜けていく。ノートには、変な言葉だけが綴られて、自分でも訳が分からない。
不意に、大野の部屋のシュールなフィギュアや絵が脳の中にパノラマのように浮き上がった。
繊細でリアルだが、どこか世界から浮かび上がってしまう孤立感の漂う彼の作品。
松本は、ノートに勢いよくペンを走らせた。時折、「あー」とか「うー」とか唸って、端正な顔の眉を顰め、大きな瞳が宙を舞う。暫くすると一人で頷いて、満足そうな顔になった。
考え事をする時の松本は、一種独特で、面白がられれてる事を本人は知らない。含み笑いがそこここで上がっていた。
松本は突き刺すようにノートに句読点を打つと、立ち上がった。
「みんな、集まって！３幕のラストを大まかに変更するから」
その場に居た数人から小さな悲鳴が上がった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 374人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
波智(プロフ) - ニケさん、お久しぶりですね。新作楽しみお待ちしておりました。何回も読み返していてコメントが遅くなってしまいました。このお話もすごく面白くて好きです。サトシくんを全力で守ろうとするジュンくんがカッコイイ。今から後編読みにいってきます。 (2018年5月28日 22時) (
レス) id: 9aff2b762e (このIDを非表示/違反報告)
智雪(プロフ) - 初めまして、智雪です。この設定、ストーリードキドキワクワクしてます。後半も楽しみにしてます。素敵なお話ありがとうございます。 (2018年5月27日 9時) (レス) id: 3739857cfc (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - あみ様 ビール三杯有難うございます。さとちのまつゆん呼びは外せませんでした(笑)後半は今日アップ予定です。四杯目になればいいのですが(苦笑) (2018年5月26日 11時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - ニケさん 潤くんの天然さ とさとっさんのまつじゅん呼びで ビール三杯いけそうです。後半も楽しみにしています！ (2018年5月24日 18時) (レス) id: 6d8377daa0 (このIDを非表示/違反報告)
斑野 ニケ(プロフ) - くま様 楽しんで頂けて、とても嬉しいです。無自覚な人たらしと、自分が傷ついても正直に真っ直ぐに生きる二人はリアルでもそうですもんね。後編も楽しんで頂ければ、幸いです。 (2018年5月21日 0時) (レス) id: 6f3d786cf4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：斑野 ニケ
| 作成日時：2018年5月19日 17時
