春囲う Ⅲ (ページ16)

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「昔、カコが自分のことガラスって例えた時は何でそこは水晶とかダイヤモンドじゃないん？って思ったし…」

『ん？うん…？』

疑問の声をあげてこちらを見上げるカコは何でいきなりこの話をしているのか不思議そうな顔をしてるけど、言い始めたんはそっちやからな

一瞬チラついた顔に先輩もこういう気持ちだったんかなと同情の気持ちが芽生える。

「自分のことを除け者にしようとするのか、私は未だにわからへんけど…」

そこまで言ってカコはようやく理解したのか一瞬目を見開いた後眉を下げる。
自分をわざと人口石に例えるならキュービックジルコニアとか私が違いのわからないであろう石の名前をあげとけばよかったのに、それでも人口石で名が通っているその石をあげなかったのはダイヤモンドと見間違えられるくらい自分のことは立派だと思ってないから

「カコは私と同じアイオライトだと思うで」

やり方は違くても目指す先は違くても、カコは私と同じように目標に向かって進んでるやろ
無垢であって、聡明であっても、マイナスを上手く消せるほど完全では無い

「それか、アメトリンやな」

透明で光と影が両立しあっているのは彼女にぴったりだと思う。けど、言葉の意味を知ってるカコからしたら変やろうな

『調和も安定もしてないんだけどな〜』

「安定はしてないかもしれへんけど調和はしてるやろ」

海妹や天ヶ瀬とVTA時代に特段関わりがあった訳ではない。割と皆に平等に関わる中でとりわけ接してたのがカコだったからこそユニットを組むとなった時の橋渡し的存在になるのがカコだったっていうのは今でも言えると思う

「カコがいなかったららなきゅらが今みたいに上手く結束出来てるとは想像も出来ひんから、感謝しとる」

最初は沈黙。蕾が開ききるかも怪しいあの空気から咲かせてみせたのは間違いなくカコのおかげだ。

『………んへへ、そっかあ』

言葉をきちんと飲み込むように顔が下に向けられ、目線が下げられる。ちゃんと飲み込めた言葉からはやっと安心が得られたようだった。

『わたし、もっと頑張るね』

嫌々これ以上頑張ったら倒れるやろ…。デビューしてから殆ど毎日配信やってるのに…
だけど、何処か楽しそうに笑う彼女を見てたら杞憂何やろうなと思ってしまう

『みんなと一緒に歩きたいから』

そう彼女が言った瞬間パッと青信号に変わる。
"ぽんと、青に変わったよ"何て言って歩き始めた彼女が濡れないよう私も急いで歩き始めた。