雨の日は遠回りしたい ページ14
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帰ろう思ってる時に限って雨が降るのやめて欲しいわ
事務所を出ようとした所でガラスの向こう側には水溜まりが出来ているのを見てため息をつく。
梅雨もそろそろ終わり時を迎えるはずなのにこうして雨が降っているのを見るとまだ梅雨は終わらないんやなと自覚させられて嫌になる。
今日も活躍する折りたたみ傘に感謝しつつ傘をさすと雨がザーザーと降っている夜の街を歩き出す。
予想通り若干遅い帰りに今日は配信を休みにして正解やったなと考えていると前に見覚えのある色素の薄い髪が見える。
黄色い温かみのある街灯の光に照らされる髪が綺麗やな何て一瞬思ってしまったけど彼女の状況を考えてそれは一瞬にして消え去った。
「カコ」
『………ぽんと…？』
名前を呼ばれゆっくりと振り返った彼女は数回瞬きをした後不思議そうに私の名前を呼ぶ。
その顔には珍しいだのどうしてここにいるんだろうっていう心情が現れてて余計にため息をつきたくなった。
「傘は？」
『……わすれちゃった』
にへらと笑いびしょ濡れのその姿にすぐ否定の言葉を挟まなかった自分がこの時ばかりは偉いと思った。
否定した所で彼女は困ったような笑みを浮かべて天気予報を見てなかっただの傘を干してて忘れたのだの下手な言い訳を述べるだけやろうから
「ん」
『ぽんとが濡れちゃうからわたしはいいよ』
傘を差し伸べてもカコが踏み出そうとする気は微塵もない。数歩踏み出せば届くその距離に踏み出さないのも踏み込ませないのも私とカコの心の距離を表してるようにも感じる。
あんたはいつも肝心な所で手を伸ばさへんよな
ジッと見続ければ段々とカコの目線が下へ下がっていき私と視線が交わらんくなる。埒が明かない
「カコにこうやってるだけで私も十分濡れたから今更やで」
折りたたみ傘何て小さいのにカコの方に向けてたら私を雨から凌ぐスペースは当然小さくなる訳で、後ろ側が雨を吸って肌に張り付く
やっぱりこの感覚は好きになれない
「それに、他の人の迷惑になるからはよ行くで」
ゆっくりと足を進めて彼女の隣に並べば、やっといつも通りのふにゃっとした笑みを浮かべてくれる。
『…ぽんとは優しいね』
「カコが無頓着すぎるんよ」
いつも自分のことには無頓着で、それでいて…
『んへへ、あのね…わたしこの季節にしか見れない花を見てたの』
「花？」
そういえばこの話…
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