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ガンッという音と、衝撃。一瞬何が起こったか分からなかった。
「な、なに…――あ」
口から声が漏れている。あの翼で視覚からヘルメットを弾き飛ばされたのだと理解して、血の気が引く。声を出してしまったと気付いたときにはもう遅く、迫りくる翼を躱すすべも無く、内部へと引き込まれてしまった。
歯の根が合わない、心音が外に漏れそうな程大きい。自分の身体から発する音を止めることが出来ない。
「お前」
それが声を発する。初めて顔を向けた。私を引き込んだオブジェクトは、美しい金髪と整った顔をしていた。
「お前がええ。一番美味い声や」
「はっ…は、？」
「お前が、ずっと俺とおって喋ってくれるんやったら、大人しく戻るわ」
何を、何を言っているんだ。そんなこと、できるわけが、
「お前には痛くすんの止めたるわ、アレやるとめっちゃ腹膨れるんやけど人間はすぐ死んでまうもんなぁ」
その言葉で気付く。あの翼に触れた瞬間、衣服も意味を成さなくなるはずだ。それなのに、痛みも何もない。オブジェクトがニヤリと笑う。
「俺、コネシマ。お前、名前は？」
つまり、私を生かすも殺すもこのオブジェクトの意思でどうとでもなるのだ。そして財団は喜んで収容するだろう、私を生贄にして。
私、わたしは――。
「……A」
「A、Aか。ええやん。まずはお前のこと、色々教えてな」
死ぬ勇気も他人を巻き込む勇気も無く、オブジェクト――コネシマと、彼が飽きるまで生きるしかないのだ。
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この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
SCP-469 - "翼の多い天使"
著者: ProfSnider
URL: http://scp-jp.wikidot.com/scp-469
作成年: 2009年
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作者名：ジャック | 作成日時：2023年6月14日 0時
