【d!】短編集番外【scp】 (ページ11)

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どのくらいそうしていたのかはわからない。長く感じたけれど、そのはずはない。出血は止まらない。涙のせいではなく、目の前が霞んできた。

「煙草、ええか？」

その言葉にほんの少しだけ頷く。わたしにも勧められて、少しだけ迷ったけれど頷く。人生最初で最後の煙草。ジッポライターで火を灯されたそれを、彼が口まで咥えさせてくれた。
ああ、苦い。口の中が血の味と、煙草の苦さで最悪だ。それでも、悪くはなかった。

「げ、ほっ……な、まえ"…」
「…俺は鬱。名乗らんでええ。君はAやな」
「ま"、た、あ"える…？」
「会わんよ。次は一人やなくて、幸せにならんとな」
「ふ…ふ、ざん、ね……ん………、」

目を閉じる。意識が遠のく。優しい声と、優しい手。スーツに眼鏡。煙草に、名前は鬱。覚えている。会えなくても、きっとずっと覚えているから。

ありがとう、さようなら。

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SCP-4999 - "私たちを見守るもの"
著者: CadaverCommander
URL: http://scp-jp.wikidot.com/scp-4999
作成年: 2018年