HiB HiB dream【短編集】2 (ページ7)

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放課後、井上くんにお礼を言おうと思って彼の所へ向かう。

｢井上くん、体育の時はありがとう！｣

｢Aさん、大丈夫だった？｣

｢うん、迷惑かけちゃってごめんね｣

これ以上会話が続かない。

ずっとここにいるのも何だし、今日はもう帰ろうと思って声をかけようとした。

｢Aさん、ちょっといい？｣

そう言われて井上くんに連れてこられたのは社会科準備室だった。

｢俺さ、入試の時に助けてもらった子がずっと気になってたんだ｣

何を話し出したかと思えば、井上くんの口から衝撃的な言葉が出た。

気になってる子って、恋愛的な意味だよね？

｢消しゴムがなくて困ってた俺を見て、自分の消しゴムをわざわざ半分にして貸してくれた子がいたんだ｣

｢一目惚れなんてありえないって思ってたけど、彼女は凄く優しそうに微笑んで一緒に受かろうねって言った｣

井上くんは自分のポケットから消しゴムを取り出して私に見せてきた。

白い消しゴムの底に見える黒い文字はきっと、井上くんの気になる相手の名前が書かれてるんだろう。

好きって自覚してから失恋までが早すぎて何も出来なかったな。

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