【d!】壊古の城【t.n】 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:1,802 hit

参ページ3

「、貴方に着いていけば、私は救われますか？」

Aの言葉に微かに頷いた彼。Aは小さな声で抑揚なく「宜しくお願いします」と肯定の意を示した。

「ああ良かった助かります。僕トントン言います、これからどうぞおおきに」

へにょと笑い手を差し出してきたのでAもそれに応じる。トントンは手を離すと先程手に持っていた赤い首輪をAの首に着けた。

ひんやりして少しくすぐったい感触。
簡単に着けることは出来たものの、外すのは大変そうだなと思う。

「それで、ご家族に…ああいやそれはいらないか。荷物とか持ってきたいもんないですか？」

Aには宝物がある。行方不明になった姉との写真、その姉から昔もらった手作りのペンダント。
それを取りに行きたいと提案をし、一度家に帰らせてもらうことになった。

公園で待っていると言うトントンに背を向けて家へ急ぐ。

親が、帰ってくる前に。

===

玄関に両親の靴を見つけたので息を潜めて自室に転がり込む。引き出しの中のペンダントを首へかけ写真立ての中の写真を取り出す。

見つかる前に行かなきゃと玄関まで行ったAの頭上に大きな影ができる。

「っ、とうさ、」

「Aゥ？こんな時間に大層な荷物抱えてどこに行くんだ？」

それは酒が入っているのか顔が赤く呂律が回っていない父親で。リビングへの入り口には下着姿でこちらを伺う母の姿が。

Aは思わず思いきり顔をしかめそうになる。
ああなんて最悪な。

何も言わないAを見て察したのか父親が「家出かぁ！？」なんてわめき出す。もちろんのこと右手は大きく振り上げて。

でもこれが最後だ、大丈夫耐えられると目をつむったその時
Aのことを誰かがふわり包み込み、父の拳を止めた。

薄く開いた目には赤いマフラーが写った。

「誰だ、お前！！！」

「お前なんかな低俗な人間は名乗るに値しない。ホンマにぐう屑やな。ーーーーー。」

初めて……否、姉が行方不明になって以来の父のこんなに焦った声。
トントンが何か聞き取れない呪文のようなものを呟くと父はその場に脱力した。母は恐怖のあまり倒れたようだ。

怖くなったAはトントンのマフラーをぎゅっと掴む。トントンはそれを愛おしそうに見つめて、そして手を差し出した。

「行こう」