7 ページ7
勇斗「太智はどう思う？」
突拍子もない話だし、そもそもここが映画の中、なんて本当にあり得るのかもわからない。
けれど、少しでも可能性があるなら、俺はそのあらゆる可能性を考えなきゃいけない。
それが、俺達の明日の繋がるのなら。
そして、ここから見える景色が、止まっているのだとしたら、それがどういう意味になるのか。
これまで多くの映画を観て、色んなシーンを見てきた太智ならば、ここが映画の中、という特殊な状況において、何がどうなっているのか、何か閃いてくれるかもしれない。
それに、ここが映画の中の世界だと一番初めに提唱したのは他でもない太智本人なわけだし。
太智「……」
俺が書きなぐったホワイトボードを見つめながら、太智はしばらく黙り込んで考えている。
やがて、太智は俺達の方を振り返ると、小さな声でぽつりとこうつぶやいた。
太智「途中までしか、できてないのかも……」
勇斗「え……？」
太智「つまり、未完成なんじゃないのかな……。あの映画……」
勇斗「未完成……？何で、そう思うんだ……？」
太智「空の雲が動かない。時間が進まない……。それは、止まってるんじゃなくて、これ以上先がない、って考えたら……？
だからあの映写機はずっと繰り返し同じ映像を流してる……。
あそこまでの映像しか、ないから……」
彼の言うことが一理あるとするなら、あの映画にストーリー性がなかったことにも、一応の説明が付く。
あの映画は途中で終わっていて、あれ以上の展開がないから、同じ映像を垂れ流すしかない。
それに連動するように、もしもここが本当にあの映画の中の世界だとすれば、途中までしかないこの映画は、これ以上先に進むことはなく、時間も、空も、何もかも動きを止めている。
信じられないけれど、なんだか否定もできない。
ここまで来ると、太智が言っていることが、一番現実味を帯びて聞こえてくる。
舜太「なあ、それじゃあさ、何で俺達が見た地割れの映像が増えたんやろ？」
太智「……。もしかしたら……
僕達があの砂漠で見て経験したことが、あの映画のストーリーになっていくのかもしれない」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：milkssss | 作成日時：2020年9月6日 17時
