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勇斗「あっ……」
そう言えば、前に柔太朗が言っていたっけ。
急がないと、あんまり時間がない、と。
勇斗「柔太朗！お前、このこと知ってたんじゃないのか？！」
柔太朗「……」
勇斗「黙ってないで何とか言えよ！！このままじゃ俺達、皆砂になって……」
柔太朗「知っていたとして、それでどうなるわけでもない。
君たちに、何ができるわけでもないだろ」
勇斗「何だと……？！お前一体何考えてんだ？！このままじゃお前も俺達も、皆死ぬかもしれないんだぞ？！
もっと早く教えてくれれば……！」
柔太朗「早く教えても、今知ったとしても、結果は変わらない。僕が死のうが、君たちが死のうが、そんなことはどうでもいい……。
僕はただ、あの映画がエンディングを迎えてくれれば、それでいい……」
勇斗「っ……」
最早こいつと俺達では見てる世界そのものが違う。
俺はそんな気がした。
柔太朗「さぁ、気が済んだだろ。曽野舜太君。元のフィルムに戻しておくれよ」
舜太「え……？」
柔太朗「あの映画を、あのスクリーンに……」
太智「……」
仁人「ふざけやがって……！わけわかんないことばっかり言いやがって！！」
柔太朗「ちょっとうるさいよ……。映画館では静かにするもんだ。常識だろ？」
仁人「こ、この野郎……ぶっ殺すぞ！！」
夏生「や、やめて仁人！」
勇斗「落ち着け仁人……。もういい……。
舜太、フィルム戻してやれ……。
それが終わったら、皆でロビーに戻ろう……。
ここには、もう用はない……」
これ以上ここにいれば、俺も仁人みたいに怒りでどうにかなりそうだった。
その前に、早くここを出なければ。
死と隣り合わせにさらされた俺達とは裏腹に、柔太朗のあの映画以外どうでも良さそうな態度。
許せないとか、むかつくと、そんな次元の話じゃない。
もう、こいつとは関わり合いたくない……。
俺はそう思ってしまった。
やがて、舜太はフィルムを交換し終え、再びあの砂漠の映像が流れ続ける。
勇斗「早く出よう」
そして、俺達はそのスクリーンを振り返りもせず、シアタールームを足早に出ていった。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年9月6日 17時
