【M!LK】漂流シアター～Winding Road～ 3 (ページ36)

今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:6,593 hit

36 ページ36

初めてだ……。
Aのこと、こんな風に抱きしめるのは……。
Aの吐息も、愛しい顔も、すぐ目の前にある。
Aって、やっぱ可愛いな……。
でも……

勇斗「ぷっ、顔にめっちゃ砂付いてる……」

A「ふふ、勇斗もね……」

それから俺達はさっきの恐怖を吹き飛ばす様に、互いの砂まみれの顔を見ながら笑った。
面白かったから、とかそんな単純な理由じゃなくて、こうやって笑わないと、きっと心もこの砂漠みたいに乾いてしまいそうだっから。
だから俺達は、ほんの些細なことでも、こうやって笑いあったんだと思う。

そして、しばらく砂の上で寝転んでいた俺達は、日が陰りだしたのに気が付き、体を起こしてさっきまで潜り込んでいた建物の方を確認してみた。
すでにそこに建物の影はなく、山のように積みあがった砂がさらさらと流れ落ちていたのだった。
手元に残ったのは、ここで拾った謎のフィルム。
一体これには何が刻まれているのだろう。
俺達が助かる手がかりが、何か記されているのだろうか。

私達の最後の記録をここに残す。

フィルムに貼られた付箋に書かれたこの言葉の意味するものは。
そんな謎を抱え、俺達は皆の待つ映画館に帰ることにしたのだった。

―
　