7 ページ7
一面に砂が吹き荒れる広大な砂漠。
草木などは何もなく、あるとすれば大きな岩が転がっているだけ。
それは、1時間ほど辺りを歩いても変わらず、本当に何もない。
そんな砂漠の真ん中に佇むこの映画館。
一体、なぜこんなことになったのか。
その答えが見つかる日が来るのだろうか。
A「じっとしてね」
勇斗「痛っ……」
A「我慢して」
そうつぶやきながら、Aは俺の口の傷に薬を塗ってくれていた。
映画館の2階にある事務所にあった救急ボックスを広げ、Aが仁人に殴られた俺の傷に絆創膏を張る。
この救急ボックスの中身も貴重な資源だと言うのに、こんなことで使ってしまうのは何とももったいない気がした。
A「手の傷も見せて」
俺の右手には、仁人を殴った時の痣もくっきりと残っている。
人なんて殴ったことなかったのに、俺はあの時、我を忘れてあいつを殴りつけていた。
この場所では、これまで経験したことのない感情が次々と湧き上がってくる。
いや、これこそ、俺の秘められた本性だったのかもしれない。
そんなの、信じたくはないけれど、でも、仁人を殴ったのは確かに俺だ。
俺自身なんだ。
A「はい、終わったよ」
勇斗「わるい、ありがとう……」
A「私こそ、助けに来てくれてありがとう……。でも、もうあんなこと、しないでね……。
あの時の勇斗、ちょっと怖かったから……」
勇斗「……。ごめん……」
怖かった、か……。
なんだか、複雑な気分だ。
助けに入ったつもりが、怖がらせる結果になってしまったなんて。
俺は、本当にどうしようもない奴だ。
この先、ここにい続ければ、こんなことがいつまでも続くのだろうか。
どんどん、俺と言う人間の自分でも知らない本性が浮き彫りになって、Aを更に怖がらせてしまうのだろうか。
そんなの、嫌だな……。
だとすれば、やることはただ一つ。
早くこの世界について知らなければいけない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：milkssss | 作成日時：2020年8月11日 17時
