【M!LK】漂流シアター～Winding Road～ 2 (ページ44)

今日:19 hit、昨日:8 hit、合計:7,363 hit

44 ページ44

「映画が、泣いてるよ。そうは思わないかい？」

勇斗「え……？」

今、一体誰がしゃべりかけてきた？
まさか、と思った。
まさかそんなはずはない。
けれど、もはやここでは本当に常識なんて、捨てた方が良いのではないだろうか。
突然周りが砂漠になった映画館、電源が差さってないのに動く映写機、俺達が見たものが更新されて映し出される映画。
こんなにも非常識で非日常なことが起こっているのだから、更に一つや二つ、おかしなことが起こっても不思議じゃないのかもしれない。
そう、幽霊が現れようが、その幽霊がこちらに語り掛けてこようが、それはこの場所では、いたって普通の事なのかもしれない。

「この映画は、とっても悲しんでる」

舜太「幽霊が、しゃべってる……？！」

「失礼しちゃうな。僕は幽霊なんかじゃないよ」

仁人「お、俺達の声も聞こえてるのか……？！」

「当たり前じゃないか」

そして、シアタールームのど真ん中の客席に腰かけていたその白い幽霊は、ゆっくりと立ち上がると、出入り口で固まっている俺達の方に視線を向けると、少しばかり表情を緩めて、微笑んできたのだった。

勇斗「お、お前は誰なんだ……。何でここに……？！」

「そんなに怖い顔をしなくても、僕は君たちが思ってるようなものじゃない。

僕の名前は……そうだな……。山中、柔太朗ってことにしておこう。

君たちと同じ、この世界に迷い込んでしまった、ただの迷い人さ」

と、彼は穏やかな口調で、俺達にそう告げたのだった。

―