【M!LK】漂流シアター～Winding Road～ 2 (ページ25)

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それは、俺と舜太、そして仁人が車に乗って広大な砂漠を出発したすぐ後の事だそうだ。
俺たち三人を見送った後、Aと夏生さん、そして太智の三人は、これからどうしようかと悩みふけって、ロビーで腰を下ろしていたらしい。
しばらくして、Aと夏生さんが話し込んでいると、気が付けば太智の姿がなかったそうだ。
彼女たちは太智を探してこの映画館を探して回り、2階の厨房を覗いた時だった。
そこで太智は、これから皆で大事に分けて食べていこうとしていたホットドッグを、両手に持って頬張っていたんだそうだ。
こんな砂漠で一晩飲まず食わず。
そりゃ腹だって減るし、食べ物があれば余計に食欲は抑えられないだろう。
けど、あれは俺達がここで暮すうえでなくてはならない大切な資源だ。
それを、太智も役も承知の上だったと思う。
だから彼は、Aと夏生さんにそれを見られて、すごく動揺して、そして。

A「こっちの事務所に駆け込んで、鍵をかけて閉じこもっちゃったの……。
でも、何回も、ごめんなさいって、泣きながら私たちに謝ってた……」

勇斗「太智……」

夏生「気にしてないから出ておいでって言っても、全然出てきてくれないの……。どうしましょ……」

勇斗「舜太、鍵持ってる？」

舜太「はい、ここに……」

ここで事務所の鍵を開けて中に入るのは簡単だ。
だけど、それで太智にどんな顔で会ってやればいいのだろう。
別に俺はこんなことであいつを軽蔑したり、責めたりするつもりはない。
むしろ、こんな状況下で、誰があいつを責められよう。
でもあいつはそれをどう思うのだろう。
話を聞いてる限り、あいつには罪の意識がはっきり出てる。
確かに、俺達の大事な食糧を勝手に食べてしまったという事実をなかったことにすることはできない。
太智はその罪の意識でここに籠城しているんだ。