ねこ。8 ページ29
＊6＊
数日後。
あれからも俺は事ある度にその道を通った。
もう２度と会えないんじゃ無いかという思いと、ある日またふと顔を出し「私はずっとここに居ましたけど何か？」と太々しい態度で待っているのでは無いかという淡い期待を持ちそこに通っていた。
角を曲がり塀の上。
丁度太陽の光が当たる暖かな場所。
住宅地の混然とした中からここを見つけ当てたあいつの千里眼は大したものだと、あいつが居なくなってから気が付いた。
そう多分と言うか俺は、間違いなくあいつを探していて、だから今まで気にした事の無かった周辺を今更ながらに見つめていたんだ。
「こんにちは。」
俺が日課になりつつある、あいつを見た最後の場所を見上げていたら突然背後から声を掛けられたのは、気にしだしてからまた数日後の休日だった。
職業柄、 どうしても過剰に反応してしまうのは仕方がないにしても、今まで１度もここで人に出会う事が無かったからだと言い訳させて欲しい。
慌てて振り返るとそこには初老の男の人がニコニコしながら俺を見つめていた。
その笑顔はとても自然で他意はない様子だったから、俺は普通に挨拶を返した。
本当なら当たり前の事なのは分かっている。
だけどどうしても以上に構えてしまう癖は一生抜けないだろう。
「良い天気ですね。」
ご老人はそんな俺の様子など気に止める事なく雲一つ無い空を見上げ言葉を続けてきた。
「あ、えっ？は、はいそうですね。」
「こんな日は誰かと喋っていないと眠くなって敵わんのですよ。」
「………そうですね。」
としか、返す言葉は見付からなかった。
だからと言ってこのまま話し相手にされるのも困りもので、どう切り上げようかと考え始めていたら、唐突にご老人は告げてきた。
「もう、戻っては来んでしょう。」
と。
「………？！あっ、ええっと…な、にが…？」
「猫。違いましたか？」
「えっ？あ………。」
「塀の上に何時もいた子ですよ。」
「あっ。」
全ては繋がった。
この人はこの塀の家主だった。
奥さんに先立たれ、此処での日々に退屈を覚えた頃、あいつがやって来たと言った。
最初はふらりと立ち寄る程度だったのが気付くと日中殆ど家の縁側で一人と一匹。何をするわけでも無く過ごす様になり、新たな友達が出来たみたいな感覚だったらしい。
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YUY(プロフ) - ちえさんさん» 難しい話だよね。本当は色々後書きがてらに書いたのですが(笑)あそこが一杯になってしまったので載せらなかったので、またその辺も話としてまとまったら載せてみますね。(笑)やっぱり考えちゃいますよね。なんかもう一本相手変えて書けるかも。(笑) (2017年1月30日 22時) (
レス) id: 846e4e6c3c (このIDを非表示/違反報告)
ちえさん(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございます。私もたまに考えます。で、５人の中で一番最初って、二宮さんかもって思ったりします。生きることにも執着しなさそうで。そんなこと、ないんでしょうけどね〜 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 6340fc5030 (このIDを非表示/違反報告)
YUY(プロフ) - あんずさん» ありがとうございます。タイミングと翔さんが一番考えそうかな？って思って誕生日にしては重かったなぁ。(笑)でも楽しんで貰えたなら良かったです。やっぱり気になっちゃうのよね。彼等を見てるとね。またたま〜にやっちゃう系かもしれませんが見て貰えたら幸いです。 (2017年1月30日 4時) (レス) id: 846e4e6c3c (このIDを非表示/違反報告)
あんず - ラジオで聴いて私もちょっと気になりましたが、あらためてお話で読むと泣きそうです…！テーマは哀しいですがとても素敵なお話だったので思わずコメントしてしまいました。 (2017年1月30日 1時) (レス) id: 3862def4f9 (このIDを非表示/違反報告)
YUY(プロフ) - ちえさんさん» ありがとうございます！そう言って貰えるとありがたい。(笑)ね、本当最後前にふるさと歌うよね？多分。その辺りがやりきった感が出るかな？って思ってます。(笑)やれば出来る子！楽しみにしましょ！！ (2016年12月27日 12時) (レス) id: 846e4e6c3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：YUY
| 作成日時：2015年9月26日 13時
