匰の中で(2) ページ45
ドアのそばまで御幸くんが来てる気配が分かる。
私は少しだけドアを開けてそして、御幸くんの腕を掴んで引いた。
「お?お、おっと」
ドアを閉めて抱きつこうとしたけど、抱きしめてきたのは御幸くんが先だった。
「ゴメン。オレ、間違ってたわ」
「メロディーラインを?」
「は?え?間違ってた?や、さっき一回聞いただけだからなだけだからっ!」
ふふふ、ははは、と、二人で笑う。そう。たったこれだけのささやかな時間がほしかった。
「もう、今日、仕事行かなくて良くね?」
「長澤さんと初共演だから、本当は凄く行きたかったの」
「は?長澤ちゃんと共演?!行けよ。早く行け」
二人で声高らかに笑う。
軽いキスがおでこに落ちてきた。私は上目遣いで御幸くんを見ると、御幸くんはニッコリと微笑んだ。
「好きだよ」
胸がジンジンと滲むように痛い。
好きって、御幸くんが私を好きって。
言ってくれた。言ってくれた!
さっきまで塩っぱくて鬱陶しかったはずの枯れ果てたはずの涙が、今度はサラサラとせせらぐように流れる。
「私も好きです。御幸くんが好き」
御幸くんはもう一度ギュッとしてくれて、そして言った。
「覚悟しとけ」
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作者名:ほさつ1秒83 | 作者ホームページ:https://twitter.com/hosatsu1_83
作成日時:2021年8月29日 19時