着信履歴(2) ページ22
連ドラがクランクアップして、次の舞台のための稽古が始まる。
私にとってひとつの集大成。ずっと憧れ続け目指してきた長澤さんとの共演が叶ったのだ。
以前、空前の大ヒットをした国民的アニメーション映画の舞台化で、2.5次元舞台にしては珍しくキャストは豪華な第一線で活躍する役者さんばかりが集められている。
制作からすれば、次代を担う若手タレントの登竜門としての枠組みや声優界で名を馳せた大物タレントが支えてきたこの2.5次元舞台の世界で、テレビを賑わす有名どころを起用する初の試みとなる。
逆の意味で彼らに負けられない一大イベントだった。
そうは言っても私は客観的な実力として、錚々たる声優さんたちやこれからというところで並々ならぬ努力を積み重ねている役者さんに及ばない。しっかりとその存在感をアピールしなければならない大切な仕事だった。
着信履歴は気がかりだったものの、そのプレッシャーを超えるためにゆっくりと落ち着ける時間が必要だった。
ーーどうしよう……。
チャイムの音が鳴る。オフなのに誰だろう。
恐らくは伊藤マネだろうと玄関に向かうと、そこには事務所の別のマネージャーが慣れない様子でかしこまって立っていて、スケジュール組みのミスで顔合わせが今日になったから急いで準備してほしいという。
非常事態にも関わらず、伊藤マネと連絡を取ってみたが、調整が効かなかったらしい。大事な舞台の顔合わせの日にも関わらず、伊藤マネは所用があって、自分が代わりに来たのだと告げられた。
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作者名:ほさつ1秒83 | 作者ホームページ:https://twitter.com/hosatsu1_83
作成日時:2021年8月29日 19時