◇ W アイドルは恋愛禁止です！4 (ページ15)

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何者でもない（1）ページ15

目覚ましが鳴ってアイマスクを外す。モゾモゾと枕を漁ってスマホの所在を確認した。

いつもならそのままデスクに乗せておくのに、昨夜はわざわざ電源を落として枕の下に挟んだ。
コールバックが気になって寝られないなどという情けないことにならないように、自ら邪念をおいやった。おかげで割としっかり眠れたと思う。
恐る恐る電源を入れて、着信履歴がないことを確かめると、少しだけホッとするような残念なような、複雑な気持ちに駆られた。

タン……タン……と窓を打ち付ける音に外を見ると、梅雨の戻りか雨が降っていた。
盛り上がっていた部員の士気にまるで「落ち着けよ」とでも言うように、雨は地面を黒く染めていた。

自主練を各々室内の筋トレに切り替え、朝食を終える。チームを代表して監督室に顔を出すのはオレの朝のルーチンだった。その日、監督からは午後練のメンバーオフが告げられ、オレは学校で梅本にそれを伝えて連絡を回すように指示すると、丸茂奏の机の中に「今日」と書いたメモを入れた。

登校した丸茂奏はチラリとオレを見て小さくうなづいた。

「御幸、今日どうする」

「今日はちょっと用事」

「あん？珍しいな」

「たまにはな」

倉持が片眉を吊り上げて疑いの目を向けてくる。