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ジンは時々私の様子を伺いながら周囲を見て、先へ進む。会話はないし、私はジンから距離を置いて歩く。ターゲットが1人でいるのを確認できたジンは、ウォッカに電話を掛けた。
「取引に迎え」
取引はウォッカに任せ、ジンは向わないようだ。携帯をしまうとジンは私に向かい合う。周囲からの殺気や視線はないし、立地が悪いので狙撃はない。ジンとの距離もあるし近距離も狙えないだろう。拳銃には気を付けよう。
ジンは俯き帽子のせいで顔色が伺えなくなった。そして何が狙いなのか分からないまま、無言の時間が過ぎていった。
そろそろウォッカが戻ってきてもいい頃になって、ようやくジンが動きを見せる。
顔を上げ、苦虫を噛み潰したかのような顔で私を見て、すごく小さい声で言葉を放った。
「……悪かった」
「……ん?」
悪、かった……? 謝ったのか? え?
「……何の謝罪だ?」
空気を和らげるため少し笑って問うと、ジンは足元の土をズリズリと擦りながら話す。
「この前、バーボンに無理やり任務を渡そうとしたことだ」
「謝る必要はないと思うが」
「今まで使ってこなかった権利を使っただろ。そこまでするとは思ってなかった。だから……」
気分を害して悪かった……と?
ジンも普段嘘を吐くことはあるが、演技のために謝る奴ではないはずだ。謝ったとしても厭らしい笑顔を浮かべて言うはずで、こんな子供みたいな演技を加えるはずがない。
「……組織を抜けた方がいいか?」
「は?」
「私はてっきり、縁を切られるのかと思っていたんだが。今まで会おうと誘っても断られていたし、突然呼ばれたかと思えば睨まれ、ここに来るまでの間も警戒を露わにして……」
「ちげぇ」
ジンは眉間に皺をよせ、口をまた堅く閉ざす。
ここまで言葉に詰まるって、一体なんなんだ? 時間稼ぎ?
「あ、こんなところにいたんすね。取引終わりやしたぜ」
ウォッカが不意を突いて仕掛けるつもりかと考えていた所、普通に堂々と戻ってくるウォッカ。それに対し舌打ちをするジン。
……とりあえずジンの話を聞こう。さっきの会話で、私に敵意を向けているわけじゃないというのは何となく伝わった。
「ウォッカ、悪いんだが先に行っててくれるか? ジンと話がある」
「お、おう」
ウォッカは心配の目を向けながらこの場から離れ、再び2人になった。
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9ねみ(プロフ) - カナデさん» ありがとうございます!やっぱり書くのすっごく楽しいので、無理せず頑張ります! (6月28日 16時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - わぁ!久しぶりの更新すっごく嬉しいです☺️これからも頑張ってください…ただ無理はなさらずご自愛ください…!!! (6月27日 18時) (レス) @page40 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 天理さん» お久しぶりになってしまって本当に申し訳ございません。無理せず頑張ります!かならず完結させますので、ぜひ最後まで……! (6月27日 17時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 理那さん» ありがとうございます!本当にありがとうございます!待たせてしまって本当に申し訳ございません。頑張ります……! (6月27日 17時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 鹽(しお)さん» 何度も本当に申し訳ございません。待っていてくださるというお言葉が本当に温かいです……。必ず完結までは持っていきますので、ぜひ長い目でこれからもよろしくお願いします! (6月27日 17時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:9ねみ | 作成日時:2020年6月30日 21時