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あぁ……。
バーボンのその一瞬を見逃さなかった私は、一気に冷静を取り戻した。
ごめんなさい降谷さん。
私は降谷さんのお腹に手を伸ばし、傷口を少し強めに押した。
「ぅ、くッ……!」
相手は病み上がりではなく現在進行形で怪我人。ハニトラ中に傷の痛みが顔に出るほどの重症。油断どうこうの前に何をやってるんだ私は。
降谷さんは痛みで力が入らなくなったのか、完全に私の上に体を落とした。
……重。
「う、ぅ……ッ」
支えながら一度起き上がり、降谷さんの下から抜け出す。降谷さんは薄く目を開け睨むだけで、抵抗はしてこなかった。
仰向けに寝かし、薬と水を準備する。
「薬飲んでください」
バーボンは諦めたように目を瞑って力を抜き、口を開けた。
肩と頭を支えて少し起き上がらせ、薬を口に入れ、水の入ったコップを零れないよう少しずつ傾ける。
ある程度水を口に含ませ、コクリと飲み込むのを確認し、もう一度コップを傾ける。それを数回繰り返した後、体を完全に横たわらせた。
額が軽く汗ばんできていたのでふき取り、乱れた毛布を体にきちんと被せる。
「じゃあ、大人しく寝ててください」
そう言い捨て、私はようやく部屋を出た。
本当、殺し屋辞めてから気が緩みすぎだ。今の私ならいつ殺されてもおかしくないぞ。
……殺し屋を辞めたからといって、防衛省という正義側に就いているからといって、命が狙われなくなるわけじゃないのに。
殺せば人は死ぬし、殺されれば死んで、そこで終わりなんだ。
◇
ベイリーズが部屋を出たのを確認し、起き上がろうとする。
「くッ……」
ダメだ。さっきよりずっと体が重い。くそ……途中まで順調だったのに。
少しでも距離を縮められたことに賭けるしかないか。今はとにかく大人しくしていよう。
僕は体の力を抜き、部屋を観察する。生活感も何もない、冷たく温かさが感じられない部屋だ。
桜間衣都羽の家と言っていたか。普段は盛永宅で過ごしてるんだろう。ここが本当に桜間宅であれば、この間のパーティーでの変装も、既存する人物に化けていたわけじゃなさそうだな。
あぁ、そういえば公安に連絡するのを忘れていた。
寝ようとしていた頭を回し、風見にメールを送る。
僕が逃したターゲットは捕らえたらしく、ひとまずこの件で僕が心配することはなさそうだ。
早く怪我を治して復帰しなければ。
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9ねみ(プロフ) - カナデさん» ありがとうございます!やっぱり書くのすっごく楽しいので、無理せず頑張ります! (6月28日 16時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - わぁ!久しぶりの更新すっごく嬉しいです☺️これからも頑張ってください…ただ無理はなさらずご自愛ください…!!! (6月27日 18時) (レス) @page40 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 天理さん» お久しぶりになってしまって本当に申し訳ございません。無理せず頑張ります!かならず完結させますので、ぜひ最後まで……! (6月27日 17時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 理那さん» ありがとうございます!本当にありがとうございます!待たせてしまって本当に申し訳ございません。頑張ります……! (6月27日 17時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 鹽(しお)さん» 何度も本当に申し訳ございません。待っていてくださるというお言葉が本当に温かいです……。必ず完結までは持っていきますので、ぜひ長い目でこれからもよろしくお願いします! (6月27日 17時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:9ねみ | 作成日時:2020年6月30日 21時