piece406 ページ6
.
恥ずかしさを隠すために一口、もう一口とラーメンを啜る。
口の中に広がる濃厚な味に笑みを浮かべると、苦虫を噛み潰したような顔をした村松が視界に映った。
あ、やばいかも。
先ほどの“松来軒のとは大違いだ”という発言はいつもの村松ならツッコミをするだろうに、それがなかったことや今の表情を見て、失言だったことに今更気づく。
何かフォローを入れようと頭を回転させ始めたところ、村松が立ち上がって小倉さんをまっすぐに見つめた。
「俺と勝負してください」
……何か面倒なことに巻き込まれる予感がする。
ちらりと降谷さんのほうを確認してみるが、特に気にしている様子はなくラーメンを啜っていた。私と村松達の関係をちょっとも勘ぐっていないのは助かるけど……。まぁ、村松が成長するところを見守らせてもらうか。
「構わねえが、今か？ 材料はどうすんだ？」
「材料は同じものを使わせてもらう。どっちが美味いラーメンを作れるか、盛永さんたちに判断してもらいたい。いっすか？」
「わ、私達……ですか！？ 私は構いませんけど……安室さんどうします？」
「僕も大丈夫ですよ。評論家ではないので個人的な感想にしかならないと思いますが……」
できるだけ公平になるようにと村松と小倉さんは話し合いをはじめ、ルールを決めていく。
小倉さんは普段提供しているものが俺の自信作だと言ったため、村松だけが作り、私と安室さん、寺坂達3人と店員の彩代さんが評価することになった。
「どっちが勝つと思う？ 賭けようぜ」
「店主一択」
「賭けすんなよ！ 糸成てめぇは即答すんな」
「吉田は？ 俺は村松」
「んー、判断すんのが偶数だし、ぴったり半分だな」
「聞けよッ！」
村松の自信に繋げるため嘘をつくこともできるけど、私は彼の友達だから。公正に評価させてもらうよ。
さぁ、どう戦う？
村松はしばらくキッチンに立ち尽くし、材料と見つめ合う。どの材料をどう調理しどう差をつけるか。目の前の友人は間違いなく料理人の顔をしていた。
限られた時間の中で試行錯誤し、先に食べていた小倉さんのラーメンを食べ終えたしばらく後、ようやく村松のラーメンが出された。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 328人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
9ねみ(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます！文章の書き方など褒めて頂いて嬉しい限りです……！ありがとうございます！のろのろ更新続いてしまっていますが、最後まで楽しんでください！ (3月4日 12時) (
レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - あまりに面白くて昨日と今日で一気読みしてしまいました！文章の書き方、心情描写、展開に至るまで全てが大好きです！実を言うとコナンに関してはにわか知識しか持ち合わせていないのですがこの作品を読んで原作に興味が湧いてきました！素敵な作品ありがとうございます (2月11日 9時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 聖奈さん» 聖奈さんありがとうございます！お待たせいたしました！これからも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (12月29日 20時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
聖奈 - 好きです！！！ほんっとに面白い！この小説に出会えてよかったです、最新楽しみにしてます頑張ってください(^^) (12月9日 23時) (レス) @page5 id: fdcdb1e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - ますしんさん» ますしんさん、ありがとうございます！書き方については度々悩んでしまうので、高度なんて言っていただけるなんてとんでもない励みになります……！大変嬉しいコメントを頂けたので、楽しんでいただけるよう頑張ります！ (9月7日 1時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：9ねみ | 作成日時：2023年8月21日 22時
