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外の景色に見惚れていると、サイドミラー越しに降谷さんの顔が見れた。
こっちから降谷さんの顔が見れるということは……降谷さんからも私の顔が見えていたということ。
「ちょっと、運転に集中してくれません?」
「どんな表情してるか気になったんだ。というか隠す素振りを見せてくれ。僕が反応に困る」
いやそんな反応に困る表情したかな私。
山は遮蔽物があって多少表情管理緩めても大丈夫そうだな〜と思えば、車を木の陰に隠すよう止める降谷さん。
「僕の手となり足とるんだったよな。……ベイリーズ」
「……はは。いくらでも」
なるほど。今日は一日降谷でいると彼は言った。
降谷さんは公安の人間。完全プライベートじゃなく、公安の仕事を手伝えってことか。
降谷さんは携帯を操作し始めるため、指示を待ちながら周囲に警戒を向ける。
ベルモットに着させられた服、微妙に動き辛いんだよな。こんなことがあるなら動きやすい服予備で持ってきたかった。
「ところで君の呼び方に困るんだが、何かないのか?」
「うーん。衣都羽でいいですよ」
「この間は嫌がっていたじゃないか」
「衣都羽を本名だと勘違いされて呼ばれるのが嫌だったんです。偽名だと分かった上なら好きなだけ呼んでください」
「やはり衣都羽は偽名か。まぁ、君が味方だと言ってから本名を衣都羽と言わない辺り、偽名だよな」
ふと、遠くの方に人の影が見える。
それを伝えようとすると降谷さんは携帯をしまい、私の顎をくいっと持ち上げ唇を合わせてきた。私もそれに応え目を瞑り、奥の方に見えた影が遠ざかるまで待つ。
降谷さんが少し口を開けたので癖で合わせるように口元を緩めると、口内ににゅるっとしたものが入ってきた。
っ!? ディープキ……!?
慌てて逃げようとするが、両手で顔を抑えられ逃げられない。
胸の鼓動と呼吸に合わせられるそのキスにペースを持っていかれ、慣れる前にそれは離された。
「や、られた……」
「ふっ。さっさとその顔を直せ。行くぞ」
好きだと伝えてから完全に弄ばれている……。人の好意で遊ぶな! 最低男!
心の中で悪態をつきながら、置いていかれまいと先に車を降りた降谷さんを追いかけた。
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9ねみ(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます!文章の書き方など褒めて頂いて嬉しい限りです……!ありがとうございます!のろのろ更新続いてしまっていますが、最後まで楽しんでください! (3月4日 12時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - あまりに面白くて昨日と今日で一気読みしてしまいました!文章の書き方、心情描写、展開に至るまで全てが大好きです!実を言うとコナンに関してはにわか知識しか持ち合わせていないのですがこの作品を読んで原作に興味が湧いてきました!素敵な作品ありがとうございます (2月11日 9時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 聖奈さん» 聖奈さんありがとうございます!お待たせいたしました!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります! (12月29日 20時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
聖奈 - 好きです!!!ほんっとに面白い!この小説に出会えてよかったです、最新楽しみにしてます頑張ってください(^^) (12月9日 23時) (レス) @page5 id: fdcdb1e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - ますしんさん» ますしんさん、ありがとうございます!書き方については度々悩んでしまうので、高度なんて言っていただけるなんてとんでもない励みになります……!大変嬉しいコメントを頂けたので、楽しんでいただけるよう頑張ります! (9月7日 1時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:9ねみ | 作成日時:2023年8月21日 22時