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我々の関係はただの協力者だ。陰の話を持ち掛けられた時も、何か条件があって手を組んだわけではない。いずれ彼を利用し陰を物にしようという目論見はあったものの、完全なる善意で協力している……つもりだったが、いつの間にか貸し借りで優位性を付ける関係になっていた。互いに借りては返しを繰り返していたため、どちらも優位につけたことはない。
……というより彼が調整をしてくる。私が借りを作ったとき、彼は食べたいものを買ってきてほしいだとか、そういったくだらないことを貸しとして出してくる。そして癪だが、彼が私に貸しを作る時は、必ずと言っていいほど先に借りを作らされる。
今回も、息子に組織と陰を通して関わっていることがバレてしまい、それを防衛省に報告しなかったため、新さんが護衛を雇ってくれたようだ。かなり優秀な人材を雇ったのか、息子にはその存在がバレていない。護衛を雇ってくれたのは父親として感謝すべきことだろう。
「そろそろやめませんかね? この関係」
「おや。この伝言を最後に協力者をやめろと?」
協力者を続けることで私にメリットはないが、常に対等な立場になるよう調整され続けられたまま終わるのはプライドに欠ける。
「いいえ。同じ子を持つ父親として、仲良くしたいんです」
「……というと?」
「利害だとか気にせず、友人のような関係を築きませんか? あぁほら、親友なんてどうでしょう!?」
「絶対に嫌ですね。絶対」
「そんなっ! 絶対って2回も言わなくても……」
「他に話がないようでしたら帰ります」
普段クールぶってる新さんが噓泣きを始めようとしたので、私は椅子から腰を上げ扉を開ける。それ以上本当に話がないようで、新さんは引き留めてこようとはしてこなかった。
今後、私が貸し借りの話をしなければこの関係はただの友人という枠に収まっていくだろう。
「……残念です。私は初めから貴方を良き好敵手であり、友人だと思っていたんですが」
最後にそう言い残して部屋を出ると、新さんは私の足をひっつかみ涙をダラダラと流していた。私はそれを完全に無視して歩き続ける。
「浅野さん……! いや、學峯さん! がっくん、ぐぅふッ……」
醜態を陰の前で晒上げようと思ったが、変なあだ名をつけられる前に顔面を踏みつぶしておいた。
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9ねみ(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます!文章の書き方など褒めて頂いて嬉しい限りです……!ありがとうございます!のろのろ更新続いてしまっていますが、最後まで楽しんでください! (3月4日 12時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - あまりに面白くて昨日と今日で一気読みしてしまいました!文章の書き方、心情描写、展開に至るまで全てが大好きです!実を言うとコナンに関してはにわか知識しか持ち合わせていないのですがこの作品を読んで原作に興味が湧いてきました!素敵な作品ありがとうございます (2月11日 9時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - 聖奈さん» 聖奈さんありがとうございます!お待たせいたしました!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります! (12月29日 20時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
聖奈 - 好きです!!!ほんっとに面白い!この小説に出会えてよかったです、最新楽しみにしてます頑張ってください(^^) (12月9日 23時) (レス) @page5 id: fdcdb1e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
9ねみ(プロフ) - ますしんさん» ますしんさん、ありがとうございます!書き方については度々悩んでしまうので、高度なんて言っていただけるなんてとんでもない励みになります……!大変嬉しいコメントを頂けたので、楽しんでいただけるよう頑張ります! (9月7日 1時) (レス) id: 4b06e7d09d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:9ねみ | 作成日時:2023年8月21日 22時