【短編集】White story 【w.t】 (ページ3)

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先生【kr】ページ3

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「これはこう…、で、こうやって解くんだよ」
「…」
「俺の顔じゃなくて、問題見なさい」

つん、と頬をつつかれる。
私の大好きな人、そう、きりやん先生に。

私は受験生というもので、センター試験まであと少しなのだ。
でも先生に恋心を抱いてしまっている。

実際、歳は近い。だからといって、彼が振り向いてくれるわけでもないが。

「わかりました」
「それは良かった。じゃあここ解いて」
「はーい」

問題を解いていく。苦手な数学だ。
でも、先生に褒められたくて、苦手な数学も克服してきたのだ。

しかもきりやん先生が担当になってから、成績がバツグンに伸びてきている。さすが。

「…全部できました！」
「えっまじ？凄いじゃん！やったね！」

問題は数分で解けるまでに成長した。
きりやん先生もにっこりと笑ってくれた。

…、

この顔を見てしまうと、告白したくなっちゃう。振られるのは分かってるけど気持ちを伝えたい。

でも、

「もうすぐで試験だね…緊張する？」

試験という壁がそれを許してくれない。

「そりゃあしますよ」
「だよねぇ。頑張ってね、ラストスパート！」

きりやん先生が他の子に教えに行こうと私の傍から離れようとした。

ぐいっ

手を引っ張ってしまった。
後悔、した。

「わかんないところあったの？」
「えっ、と…」
「俺他の子見に行かなきゃだからさ行くね？」
「先生好きです」

言っちゃった。そりゃあ勢いで。
他の子に取られたくない一心で。

冷や汗が出た。伝えたい、と思ってても急にこんなことになるなんて。
ドキドキと心臓が飛び出そうなくらいに音をたてた。

きりやん先生は目を見開いている。少しだけ、耳が赤い。

「A」

先生の心地いい声でそう名前を呼ばれた。

「それはAの試験が終わって、合格したら、俺から言う」

「え…」

「つまり、そういうこと。だから絶対合格してね？」

くしゃ、と私の頭を撫でてきりやん先生は去っていった。
芳香剤の香りだけがそこに残った。