鬼を連れた隊士 ページ45
なんだろう…鬼の音が二つする。
一つは邪悪で強力なもの。
もう一つは確かに鬼なのに、優しくて温かい。
ここまで来る道中、冨岡さんはある事を話してくれた。
以前任務で赴いた山で、ある家族が鬼に殺された。
生き残った少年は、不運にも鬼にされた妹を人間に戻す為に鬼殺隊に入隊したのだと。
この間、蝶屋敷で耳にした噂は本当だったんだ…。
私は固唾を飲んだ。
目の前には蜘蛛の糸が半球型に少年を捕らえて居る。
直感的にマズいと感じた私は糸を斬る。
「君、大丈夫!?」
蜘蛛の鬼に酷くやられたのだろう、私の声にも目を見開くだけで少年は立つ事も出来ない様子だ。
覆い被さり、庇って居るのは身内の者だろうか?
鬼の音がする。可哀想に。
「俺達が来るまで良く堪えた 後は任せろ」
そう少年に言うや否や、冨岡さんが鬼の首を目にも留まらぬ早さで斬った。
少年の近くで倒れた鬼に情けを掛ける少年に、私は凄く驚いた。
「人を喰った鬼に情けをかけるな」
冨岡さんは崩れ消え去った鬼の衣を踏みつけて少年に言う。
「殺された人たちの無念を晴らすため これ以上被害者を出さないため…勿論俺は容赦なく鬼の頸に刃を振るいます
だけど鬼である事に苦しみ 自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない」
(「なるほど…この子が…」)
「お前は…」
冨岡さんも察した様だった。
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作者名:こあら。 | 作成日時:2021年6月25日 22時