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力不足 ページ33

「鬼…!?」


Aが抜刀するのを止め、俺は相手の様子を伺う。

向かいの住人が戸を開け出て来るのを狙っていたのだろう。
鬼が素早く住人へ近付く。




「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦」


恐怖する住人目の前に鬼の首が飛び、消え失せた。


Aは目を丸くして俺を見ている。



「凄いです!冨岡さん!!速くて見えなかったし 冷静に対処してて なんだか こう ぐわー!ってなりました!!」



擬音が解り辛い。


「こんなに弱い鬼一匹の為に 俺たちが呼ばれた訳では無いだろう 近くにまだ居るはずだ 油断するな」


「そんな気はしていました …一里先から音がする」


Aは耳が良い。だからかなり遠くの音、特に鬼に関する音を拾う事が出来るようで感心する。





「来る…! 炎の呼吸 肆の型 盛炎のうねり!」


煉獄と任務を共にした時と同じ炎が舞う。
階級が甲だけあってAの実力は煉獄と然程変わらない様に思う。




先程の鬼とは比べ物にならないくらい速度が速く、強い。それに図体がでかい。
それをもろともせず立ち向かうAに見惚れてしまった。



「冨岡さん!!」

Aの声にはっとし、俺も技を繰り出す。



「水の呼吸 弍の型 水車」



技が効いているのだろうか?と疑う程鬼の勢力は衰えない。



「どうなっている? …っく!!」


僅か気を抜いていた隙に俺の頰を鬼の爪が抉った。






「大丈夫ですか!?冨岡さん!!キリがない…!
歌の呼吸 伍の型 四面楚歌」




A独自の呼吸を使う刹那、空気が静まったかと思うと、とてつも無い衝撃波がA中心に拡がった。

俺も巻き込まれると思い身構えたが、それは俺には何も与えず、鬼にだけ効いていた。






「ギヤアアアアアアアア」


けたたましい雄叫びと共に鬼は消えた。




「…まだまだ 力不足 だな…」


Aはよろけると倒れそうになったので俺はすかさずAを抱き止めた。



「良くやった」





褒めてやるとAはニッと笑っていた。

不思議な女だ。









.

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作者名:こあら。 | 作成日時:2021年6月25日 22時

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