ドン引き彼女 ページ10
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我が彼氏はデビューして数年で高級腕時計のコレクションにハマり始めた。知らないうちに腕時計が1本、また1本と増えている。最初の頃は新しい心霊現象かと思ったくらいだ。金銭感覚の狂い方にもはや心配や呆れを通り越して悟っている。
『いや、あのね? 私もそこそこお高いアクセサリーを持ってますとも』
特別な日のためにダイヤモンドやルビーが散りばめられたネックレスやイヤリング、ブレスレットを持っているし、奮発して買ったペンダントもある。総額にして新車1台分にはなるだろう。
『だけどもだけど、なのよ』
「おう」
『ふっかの趣味に口出ししたくないし、理解してるつもりだけど、その腕時計1本で免許取れるし車買えちゃうじゃん』
「……ド正論を並べるんじゃないよ」
「Aさんドン引きしてもうてるやん」
どうやら我が彼氏は芸人さん達と仕事で行ったハワイで高級腕時計を1本買ったらしい。
『向井くん聞いてよ』
「俺でよければ聞きます!」
『ここ最近は悟ったというか諦めたというか、とにかくそんな感じだったのよ。昔から金遣いが荒いとこあったし、ふっかママに財布の紐はAちゃんが握って絶対離すなって言われてるレベルだし、付き合った時点で覚悟してましたよ』
「酷い言われようですねぇ」
「Aさん?」
『でも今回はすごく引いてる。出会って15年で1番引いてるわ……』
「ふはっ!」
「Aさん!?」
今回もまた新車が1台買えるほどのお値段だった。サイズ感にするとファミリーカーが買えてしまう。軽自動車なら3台くらいはいけるだろうか。
確かに素敵なデザインで辰哉くんが好きそうではあるけれど、あまりにも軽く買えてしまってないか、なんて思えて仕方がない。
『しかもノリで買ってるのがバカ。ハワイに飲まれてるもん』
「Aさんキレッキレですねえ」
『怖いもん。この夏1番怖い。どんな心霊現象より怖い』
そして私自身、ふっかが簡単に高級腕時計を買ってしまうことで悩みもできた。
『これは私の個人的な事情だけど、私ね、結婚する相手に結婚指輪と婚約指輪を貰ったらお返しに腕時計をプレゼントしたかったのね?』
「ほおほお」
自分だけ貢がれるのは気が引けるから相手の結婚指輪の費用を負担したい。加えて婚約指輪のお返しで腕時計をプレゼントしたい。私の夢だった。
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2023年8月28日 23時