Time goes by 6th (ページ6)

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「あーあ、お前のせいで体調悪くなってきたぁ……」

ようやく自らの状態を受け入れられた。朝38.2℃だった熱は撮影が終わった時に39.8℃にまで上がっていた。だから病院に直行したし、メンバーからAに連絡が行った。

それでも元気だと言い張ったけれど、Aの前で虚勢を張っても破られる。不調を認めた瞬間、全身に巨大な石がいくつものしかかったように重い。苦しい。しんどい。気が遠くなる。1人では身も心も支えきれなくなってAに抱き着いた。その肩に額を押し付けてグリグリ動かす。

『元々悪いんだよ馬鹿野郎っ』

「いてっ」

……俺を、助けてくれてありがとう。後頭部をペシッと叩いたのはきっと照れ隠しだ。

『ハグの前にご飯食べようね？卵がゆ作ったから』

「待って」

キッチンに戻ろうとする彼女を今度は後ろからギューッと抱き締める。

「ついさっき俺のピンチに駆けつけたいって言ったばっかじゃんよ」

『だから来たんだよ。涼太くんと照のアシストを貰って』

「でもハグ返してくんなかった。ギューしたら治りそうなのに」

俺はAがキッチンに歩き出すのも構わずにくっつく。この熱が疲れやストレスから来ているのなら、Aとのハグはどんな良薬にも勝るはずだ。

現に心の底がじんわりと暖かくなってきた。2週間こまめに連絡を取り合っていたけれど、直接触れるのは2週間だ。

「美味そっ」

『ごめんね、パックご飯だけどいい？』

「いいに決まってる。俺パックご飯をアレンジできないし、こっちこそ帰ってきてすぐ作ってくれてありがと……」

『ん』

小鉢に鶏がらスープの匂いの正体、卵がゆが盛り付けられる。潰れたご飯粒の白に卵の黄色が優しく色付く。

『座ろっか？』

「離れたくねえー……」

『お粥食べさせられないから！』

「あーんしてくれるの？」

隣合わせてソファーに座る。

『病人は何もせずに大人しく食べさせられてください』

Aが左手で小鉢を、右手でスプーンを持つ。あーん、なんてベタな言い方をしながら食べさせはしない。でも食べやすい量を掬って俺の口に運んでくれる。

「めちゃくちゃうめぇー……」

優しい味が弱った体に染み渡る。

『無理して食べなくていいからね？』

「してない。本当に、本当に美味くてさぁ……」

愛を感じた俺はボロボロ涙が止まらなかった。