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熱はない、熱はない。俺は元気、俺は元気。超元気、絶好調。口でも心でも唱え、自分に言い聞かせる。
「待って、ふっかさん怖いんだけど……」
「あいつ目が逝っちゃってるけど大丈夫？」
「全然大丈夫じゃない。今唱えてる言葉の真逆の状態だから」
俺らの後に入ってきたラウは怯え、佐久間は冷静に失礼ぶっこいてやがる。
「嘘でしょ？ 病院は？」
「今のとこ行ってない。でも状況が変わらないようなら無理やり行かせるつもり」
俺同伴でね、と照は目を光らせた。俺は2人が来る前に服用間隔を破って2度目の服薬をした。体が火照っているのは変わらないけれど飲む前よりは楽になってきた。
でも俺の体は服用間隔を破らなければならないほどガタが来ている。自覚があるからこそ、呪文のようにポジティブな言葉を呟かなければ今日を乗り越えられない気がしていた。
「はよ……」
眠そうに翔太が入ってきた。
「ふっかそこどいてくんね？」
「いいよぉ……」
俺は大丈夫。強く言い聞かせて起きて立ち上がる。一瞬視界に闇が広がってフラッと体が宙を切る。足が縺れる。あ、ヤバい……
「ふっか！？」
「馬鹿野郎」
倒れそうな俺を間一髪で照が支えてくれた。
「翔太ごめん。こいつ熱ある」
「はあ？ マジ？」
「マジ。だからソファーはふっかに譲って？」
「もちろんだろ。逆になんで俺に譲ろうとした？」
「馬鹿だからだよ。しんどいのに翔太に譲ろうとするし、Aに秘密にしてほしいとか言うくらい馬鹿だから」
「大馬鹿者じゃねえか」
2人の会話も遠く感じる。そうだよ、俺は馬鹿だよ。自分より人を優先するくらい。
照に支えられながら再びソファーに横たわり、メイクの番が来るまで俺は極力何もしないことを今いるメンバーと約束した。程なくしてめめや康二、阿部ちゃんもやって来た。3人とも一様に驚き、心配してくれたらしい。
俺が使い物にならない分、他のメンバーがフォローをしてくれたらしいけれど、正直撮影中や撮影が終わった後の記憶はほとんどない。
辛うじて病院での記憶があるくらいだ。
「感染症の検査結果は全て陰性でしたよ。今回の発熱は恐らく疲れとストレスによるものでしょう。1週間とは言いませんので、3日は休んでください」
「分かりました。休ませます」
「少し栄養も足りてませんから今から点滴しますね」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年8月28日 23時
