ボディガード ページ14
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器用なふりして意外と不器用、隙がないように見えて実は隙だらけ。そして強面だけどとても甘えん坊。それが岩本照という男だ。でも周りが驚くほどの努力家でどんなに時間がかかろうが夢や目標を掴み取る。
長年シンメとして照と活動してきた俺はヤツの嬉しい報告が本当に嬉しい。
「ふっかふっか」
今日も何か嬉しいことがあったようだ。それは表情と声だけで分かった。
「俺ドラマ決まった」
「マジ！？」
照はひひっ、と口元を隠す。ホッチキス留めの企画書には“主演:岩本照”の文字がある。
「でね、もう1つ見てほしいものがあって……」
紙をペラッと捲るとそこには出演者の名前がずらりと並んでいた。
「これ！」
長い指が差した先には“藤井A”の文字。
「えっ！？ マジ！？」
「マジでヤバい」
出演者の順番的に2番手ということは、のぞみがヒロインだ。
「Aなの……？」
照の初めての単独主演のヒロインが藤井A。頼もしいったらなんのその。舞台でもドラマでも、主演として場数を踏んできた彼女が照を支えてくれる。
「いやぁ、良かったねぇ……」
モエカレの時もミュージカルの時も、照は主演することをメンバー全員に一斉に報告した。それが今回、俺に最初に打ち明けてくれたのは俺がAと付き合っているのが大きいのだろう。
当のAからの報告はなく、むしろだる絡みのLINEしか届いていない。多分本人的には情報解禁でビックリさせるつもりだ。残念だが親友のおかげで把握できましたよ。
「で、内容は？」
「ボディガードと弁護士のラブコメ」
「……は？」
それはこいつがボディガードであり、弁護士がAってことだな？ 嬉しそうな表情から一転して真剣でどこか不安げな表情をした照はまっすぐに俺を見ている。
「だからふっかには先に言いたかったんだよね」
「俺に？」
「もしメンバーと彼女がラブストーリーをやることになったら、俺なら嫉妬で苦しくなっちゃうから……」
なんと律儀で優しい男なのだろう。
「これからバラエティーで一緒に番宣する機会増えるし、多分俺が思ってるよりもAとくっついてる時間長くなると思う」
自分がされて嫌なことは人にもしない。でも今回のように芝居が関わってくると話が変わってくる。嫌でもやらなければならない。
「絶対に好きにならないから安心してね」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年8月28日 23時
