Time goes by 6th (ページ11)

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ブランドにもこだわりがあって、お相手の男性に今辰哉くんが集めている高級ブランドの腕時計をプレゼントしたいと思っていた。

将来のために20歳の誕生月からこまめに貯金している。相手が辰哉くんだと確信してからはより一層結婚への現実味が増し、何不自由なく生活できるように今でも貯金を続けている。

不測の事態で切り崩したこともあったけれど、最近通帳を確認したらそれなりにいい額になっていた。

「でもふっかさんが自分で集めてもうてるから無理やんってことやんな？」

『そういうことです。ダブりそうで買えないもん』

辰哉くんの色んな一面を知っているとはいえ、辰哉くんがそのブランドのどの時計を買ったのかまでは把握できていない。下手すれば特定班のファンの方が知っている。

「でもAさんも大変やね、散財癖ある男が彼氏になって旦那になるんやから」

『金銭感覚だけなら多分照と阿部ちゃんに近いと思うもん』

照兄と阿部ちゃんなぁ、と向井くんは抑揚の強い訛りを操る。

「なんか分かる気ぃする。好きな物にはガッツリ金使うけど、それ以外は安くてもいいタイプやろ？」

『そんな感じ。全部を高くまとめてたら金銭感覚おかしくなる気がして』

Aちゃんって思ったより庶民的だね。私を深く知っている人は皆がそう言う。私は年収の高低に関係なく堅実に生きていきたい。昔馴染みの5人に付き合ってます報告の時に語ると、照と阿部ちゃんが強く共感してくれた。さすが同学年、93年組の絆が深まった。

「黙って聞いてたらさぁ、なぁんか俺の金銭感覚が狂ってるみてぇじゃん……」

静かに聞いていた辰哉くんが厚みのある唇を尖らせる。

「全っ然可愛くない……」

「うるせえなぁ！ Aが可愛さ感じてたらいいんだよっ」

『感じてないよ』

「おぉい！ Aだけは味方であれよ！」

『あと金銭感覚は狂ってます、間違いない』

そもそも彼の散財癖は腕時計に留まらない。身の回りの全てをハイブランドで揃えつつある。

『狂ってなかったらクレカの上限超えて止められることはないんだよ？』

「ふはっ！」

「ぐうの音も出ません……」

遂に観念したようだ。

『後輩に夢を見せるのも大切だけど、私との現実も1mmくらいは大切にしてほしいなぁなんてね？』

「1mmと言わず1番大切にします」

「言ったな？俺聞いたで？」