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横になってみたものの、まともに寝付けない。意識を宙に浮かべようとするとカタン、トン、とドアが開閉して浮かばなかった。
「舘さんおはよう」
「照おはよう」
どうやら舘さんの家の前に着いていたらしい。
「あれ、ふっか寝てるの？」
「うん。昨日遅かったみたい」
「なるほどねぇ」
2人の小さな話し声が聞こえる。
「んんんっ……、起きてるよぉ……」
念のために顔を見せる。舘さんは俺の目を凝視した後、何かを悟ったかのように一瞬目を見開いて顎に左手を添えた。舘さんは俺が体調不良で倒れた時、真っ先に気づいて何度も助けてくれた。命の恩人と言っても過言ではない。
「少しでも寝ときな？ 今日も長丁場だし」
「ん……」
薬の効果が現れ始めてもおかしくはない時間、発熱は一向に収まる気配がない。それどころか悪くなっているような気さえする。かといって次に服用できるのは3時間後くらいだ。
「ふう……」
クーラーが効いているはずなのに汗がダラダラ流れる。車の少しの揺れると酔いそうになる。ツルも俺の様子がおかしいことに薄々気づいているのだろう、いつもなら率先して車内を明るくしてくれるけれど今日は静かだ。
しばらく経って車が停まった。再びドアの開閉音が聞こえる。
「ふっか起きてる？」
「ん、眠れない……」
舘さんが車に残っていた。
「やば。顔真っ赤じゃん」
「そんなにヤバいかなぁ……？」
「明らかに熱ある人の顔色してるよ？ 白目まで赤くなってる」
「まぁじかぁ……」
鏡もまともに見れなかったから、顔も目も赤くなっているなんて思わなかった。小鼻は定期的に赤くなりがちだけど。
「大丈夫？ 今日撮影できそう？ 休んだ方がいいんじゃない？」
「……できる」
舘さんの問いかけに俺は強く頷いた。
「こんなんで休んでられるほど暇じゃないじゃん、皆」
もし俺が休んでしまったら俺より忙しいメンバーに皺寄せが行く。今日という日さえ耐えきれたらそんなこともなくなるし、とにかく耐えるしかない。
「それはそうだけど」
「だから大丈夫。病は気からって言うし、俺が熱じゃないと思えば熱じゃない」
「その積み重ねで何回もぶっ倒れてること忘れないでね？」
舘さんはさっきの照と同じように腑に落ちないように言った。
「はぁい」
2人で話しているとツルと照が戻ってきた。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年8月28日 23時
