支えられるということ ページ1
·
Aが名古屋から戻ってくる。心躍らせつつも少し体がかったるいなんて思いながら、昨晩は早めに床についた。
翌朝起きてみると夜以上にしんどさが増し、倦怠感と熱で大量の汗をかいていた。
「やっべ……」
試しに体温を測ると“38.2℃”と表示されている。俺は1年ぶりに高熱を出してしまった。
湿った枕カバーやシーツを洗濯する元気がない。朝食を摂るほどの食欲もない。でも今日は1日グループ活動が入っている。絶対に休めない。熱中症対策用のスポーツドリンクを胃に貯めて解熱剤を飲み、ついでに栄養ドリンクもぶち込む。これで少しは良くなるはず……
かったるい中で仕事の準備をし、できるだけ体を冷やしながらマネージャーの到着を待った。しばらくして家の前に送迎車がやってきた。寝たら少しは楽になるだろう、と半ば祈るように後部座席に座る。
「ふっかおはよう」
「……ぁよ」
助手席には照が座っていた。
「……ツルさん、多分こいつ熱あります」
「えっ！？」
一瞬で見抜かれてしまった。マスクをして顔を覆い隠したはずなのに。
「ふっかさん病院行きます？」
「だいじょぉぶ、つーか熱ないし元気だべ」
薬も飲んだし。これから効いてくるはずなんだ。
「朝風呂したから火照ってるだけなのよ」
怪しい、と言わんばかりの光るの視線が刺さる。本当は朝風呂なんてしていない。元気な時はするけれど今日はそんな元気も余裕もなかった。
「悪かったらちゃんと言うから。ね？ 心配しないで？」
お願いだからこれ以上問い詰めないでくれ。
「……分かりました。ふっかさんの言葉、信じますよ？」
俺の願いが通じてツルは落ち着いてハンドルを切った。照は納得していないのか不満そうに睨んでくる。そのうち面白くなさそうに画面に目を移した。
ピコン、と俺のスマホから通知音が鳴る。画面から降りてきたバナーには照からのメッセージが届いていた。
“辛くなったら言ってね”
“横になるかシート倒して寝たら？”
“ありがとう”
“あとでコンビニ行くみたいだけど欲しいものある？”
“水とスポドリとカットフルーツ”
OKのスタンプを確認してスマホをOFFにする。さすがに起きているのはキツくて耐えられない。これから始まる撮影のために、少しでもエネルギーを回復させるために、俺はシートを倒して横になった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1034人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年8月28日 23時
