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Aの一言ひとことに重みを感じた。俺達は青春時代から今まで人生の半分を共に過ごしている。
『自然体でいられるし、背伸びしすぎなくても褒めてくれるし、ふっかと関係性を変えた20代半ばから後半はもっともっと楽しかった』
色んな女性と関わってきたけれど、俺にとっても安心できるのはAくらいだ。
「30代のあなたも飽きさせるつもりはありませんよ？」
『飽きるつもりもありませんよ？』
見つめ合いながら笑い合う。触れるだけのキスをするとチュ、と浴室内にリップ音が響いた。
『正直ね、30になる瞬間何しようかなぁ、ジャンプして年代跨ぎしようかなぁとか考えてたよ』
「でも俺に跨ってたってか？」
『バカ。変態。ド変態』
事実だから仕方がない。20代から30代へ変わるその瞬間、Aは俺に跨って快楽を全身で感じるために腰を動かしていた。なんとでも言えばいい、俺は事実を口にしたまでだ。
「30代になる瞬間何してましたかって聞かれたら適当に答えときなさい？」
『もちろんそのつもり』
まさかまぐわっていた、なんて誰にも言えない。情事を終えて時計を見たら既に日付が変わっていた。特別な1日の始まりに大人の時間を過ごしていたことは家族にも友人にも、メンバーさえも言えない2人だけの秘密だ。
「そろそろ上がりますか」
『うん。さすがにパンツは履いてね？』
「安心しろ、履かない」
『全然安心できないじゃん。まだやるつもりなの？』
浴室のドアを開く。洗面所の着替え置きには2人分のバスローブや下着が置いてある。
「俺は何回でもできる。溜めに溜めたもんを発散するのは得意だからな」
『化け物じゃん。モンスターだよ』
「化け物でもモンスターでもねえよ。ちょっと血の気が多いだけなのよ」
鏡の前に並び、Aはバスタオルで身体を拭いた後ブラとショーツを履いてバスローブを羽織った。
「気づいてんだろ？ 俺がまた固くなったの」
『気づいてないふりしてたのに』
「じゃあ話は早い」
背後からAのバスローブを捲る。覚悟したのだろう、Aは洗面台に両手をついてほんの少しお尻を突き出した。
「分かってるじゃん」
『嫌いじゃないし……』
素直でよろしいこと。
「じゃあ遠慮なく」
呑気に考えながら俺はバスローブとショーツを脱がせた。俺達の夜はまだまだ終わりそうにない。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
