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『話逸れたけど、そんなこんなで小西さんとお別れしてもう恋なんてするもんか、って思ったのが20代半ばだったわけよ』
「ほお」
『傷つくのが怖かった。なんなら今後一切芸能人と付き合うもんかって思ってた。相手が自分じゃない人と週刊誌に撮られた時の辛さを知ってしまったら、相手がどんなに自分を好きでいてくれても芸能人なら諦めようって殻にこもってた』
「……うん」
『それどころじゃなくなってたのもある。メンタルが壊れかけてたから恋とか愛とか悠長なこと言ってられなくて、ひたすらしんどくて辛くて、でも誰にも助けを求められなくて苦しかった』
Aがメンタルに変調をきたした頃を思い出す。
舞台へのプレッシャーと役に没頭するあまり自分を見失う。初めのうちは誰にも気づかれないように堪えていたようだけど、徐々に隠すことさえままならなくなっていた。
『だけどふっかだけが最初から気づいてたんだよね。何かがおかしい、私が私じゃないって』
「当たり前じゃん。俺あの時にはもうお前を女として見てたんだから」
初めはほんの小さな変化だった。髪の毛にツヤがない程度の、オイルを塗り忘れたくらいにしか思えないくらいの小さな変化だった。
『ふっかも仲間が一気に辞めたりメンバーが増えたりして精神的にお疲れモードだったと思うの。それでも助けてくれてすごく嬉しかった』
「俺はただお前に好きになってほしかったんだよ」
『でもちゃんと救われたんだよ？』
「嬉しいこと言ってくれるじゃない」
『誕生日は大切な人に感謝を伝える日だから』
そう言って微笑むAにまた1つ好きが増えた。
『実際に好きになったわけでね。ふっかと付き合うなんて無理、絶対無理、ありえないって思ってた女が』
「いつかは好きになる運命だったんだろ、俺イケメンだし」
『どうしたの？ 突然新しい麺料理の話なんか始めて』
「麺料理じゃないのよ。意味分かんねえだろーよ、急に麺料理の話始めたら」
『B型ならありえる』
「貴様はB型をなんだと思ってる？」
Aのボケにツッコめる。付き合ってからも変わらずに弄ってくれる。俺達の話は毎回いくらでも逸れるけれどそれさえも愛おしい。
『ふはっ！
でもね、私感謝してるよ。間違いなく闇から救ってくれたのはふっかだし、一緒にいるとすごく安心する』
「……おう」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
