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愛している。狂おしいほど愛おしい。さっぱり、サバサバを自称しながらしっかり重くなってしまった。でもAへの愛をAが全て受け取ってくれる。
モテるから彼女は絶えないけれど続かなかった俺がAとなら一生かけてそばにいたいと思える。4年半近く続いていること自体が奇跡だ。
「A、おめでとう」
『ありがとう』
ぬるま湯を貯めた浴槽の中で火照りを冷ましながら後ろから抱き締めて密着する。直接が無理でも画面越しで祝ってきたはずなのに、誕生日当日に直接祝うことにブランクがあると少し緊張する。
「どうだった？ 20代とやらは」
『そうねえ……、20代の始まりはね、憧れの人が好きで、でも絶対に付き合えないって思ってたから付き合うことになってすごく幸せだった』
「Aさん」
『ん？』
「25から後の話をしません？」
『んはっ！』
そりゃ20代には前半と後半があって前半戦は小西さんとのあれこれが欠かせないのだろうけど、いざ聞かされると凹む。当時惚気も恋バナも聞いていたのに。俺もAじゃない女と付き合っていたくせに。
『まあまあ、落ち着いて聞いてよ。でもね、好きだったけど好きになりきれなかった。せっかく憧れが身近な存在に変わったのに、現実を受け入れられなかった』
「うん」
『だから彼の人間らしい一面を受け入れられなくて、ああいうことがあった時に信じられなくなった。どっちにしても幻滅してたと思うけど、地の果てまで幻滅したのは理想が高すぎたんだと思うの。若くて夢に夢を見てたから仕方がなかったんだろうけどね？』
でもそんな言い方をされたら、
「俺に夢は見てなかったみてえじゃん」
『大正解、見てなかった』
はっきり言われてしまった。
『それが良かったんだよ？』
「夢を見てないのが？」
『素の深澤を知ってたから、いざ付き合っても見栄を張らなくても楽に過ごせた。始まりがジャニーズの深澤辰哉じゃなくて、男友達の深澤辰哉だったから幻滅もしないし？』
褒められているのか貶されているのか、俺には分からない。でもAが紡ぐ言葉には愛があって嘘偽りがない。
『多分だけど、人間関係も恋愛も、減点方式より加点方式の方が上手くいくんだよ』
「減点方式よりも加点方式ねぇ……」
『そもそも点数が付けられないけどね、居心地の良さが振り切れてるから』
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
