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今日1日呟いていたという呪文の呪縛から解放するには真逆の言葉で自覚させなければならない。
『しんどい、しんどい、休みたい、休みたい……』
「……そうだよ。しんどいよ、めちゃくちゃしんどい。起きた時から体重くて怠かった。ずっと熱高いし眠り浅いし疲れた……」
前向きに頑張る辰哉くんが好きだけど、限界値を超えてもなお頑張りすぎてしまうのは好ましくない。
重荷を降ろした辰哉くんから弱音がほろほろ溢れる。そう、それでいい。私の前で気張らなくていい。
「あーあ、お前のせいで体調悪くなってきたぁ……」
ようやく認めてくれた。辰哉くんははにかみながら抱きついて私の肩に額を押し付けた。
『元々悪いんだよ馬鹿野郎っ』
「いてっ」
不覚にも可愛いと思えて照れ隠しでペシッと後頭部を叩いた。
『ハグの前にご飯食べようね？ 卵がゆ作ったから』
「待って」
キッチンに戻ろうとすれば今度は後ろからギューッと抱きしめられる。
「ついさっき俺のピンチに駆けつけたいって言ったばっかじゃんよ」
『だから来たんだよ。涼太くんと照のアシストを貰って』
「でもハグ返してくんなかった」
ギューしたら治りそうなのに、と辰哉くんは私がキッチンに歩き出すのも構わずにくっついたまま着いてくる。
40℃近くまで上がった体温を下げるのにハグは心もとないよ、なんて現実的な言葉はいつもより幼い辰哉くんの笑顔に免じて言わなかった。
「美味そっ」
『ごめんね、パックご飯だけどいい？』
「いいに決まってる。俺パックご飯をアレンジできないし、こっちこそ帰ってきてすぐ作ってくれてありがと……」
『ん』
小鉢に卵がゆを盛り付ける。
『座ろっか？』
「離れたくねえー……」
『お粥食べさせられないから！』
辰哉くんは認めた瞬間にここぞとばかりに甘えてくるようになった。変化が面白い。
「あーんしてくれるの？」
『病人は何もせずに大人しく食べさせられてください』
ソファに座らせ、スプーンで掬って1口含ませる。程よい熱さの卵がゆは辰哉くんのお口に召したらしい。
「めちゃくちゃうめぇー……」
噛み締めるように咀嚼してポロポロ涙をこぼし始めた。
『無理して食べなくていいからね？』
「してない。本当に、本当に美味くてさぁ……」
かなり弱ってる。辰哉くんは泣きながらもパクパク食べ進めた。
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Time goes by 6th
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
