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「じゃっ、俺らは帰りますか」
照が涼太くんに声をかけて立ち上がる。涼太くんもそうだね、と相槌を打って2人分の荷物を手に取る。
『大したもてなしもできなくてごめんね？』
「いいよいいよ。こっちこそお疲れの時に呼び出してごめん」
「あとは任せても大丈夫？」
力はないものの何がなんだか分からない、と体を起こして瞳をキョロキョロさせる辰哉くんをよそに、2人を玄関まで送る。
『うん、大丈夫』
「あとは頼みました。一応ふっかは明明後日まで休みになったから、できればそれまでに回復させていただけると……」
『私お医者さんじゃないのよ』
「でもふっかのストレスと疲れを癒せるのはお嬢だけだよ」
涼太くんはふんわり微笑んだ。
「今回はお嬢の存在そのものが特効薬だし」
圧をかけているのか、天然なのか。私には定かではないけれど、きっと2人……いや、SnowManのメンバー全員に託されている。縁の下の力持ちとして皆を支える辰哉くんを元気づけられるのは私なんだ、と。
『善処します』
「よろしくお願いします」
2人を見送る。ガタン、とドアが閉まったのを確認して鍵を閉める。リビングに戻ると相も変わらず状況を把握できていない辰哉くんはソファーで丸くなっていた。
眠くないのかメガネをかけ、恐らく次の仕事の資料なのかホッチキス止めされたプリントを読んでいる。
『こらっ』
「あっ」
『病人は休むのが仕事でしょうが』
「でも明日もシゴト……」
『あなたは明明後日までお休みです』
あからさまに傷ついた表情をした。懲りずに明日も無理をしようとしていたらしい。魂胆がバレバレだ。
『責任感が強いのはいいことだし誰かに迷惑をかけたくないのも、代役立てられて自分の仕事がなくなるのが嫌なのも分かるよ？ 地方帰りの彼女に心配かけたくないのも。でも今優先すべきなのは人に気を使うことじゃなくて体を治すことじゃない？』
「それは、そうだけど」
『あとさ、心配くらいさせてよ』
今なら素直に言える気がした。
『どんなに忙しかろうが辰哉くんのピンチにすぐ駆けつけられる彼女でありたいよ、私』
前髪に覆われた額に手のひらを乗せる。火傷しそう……とは思わないけれど、普段の体温以上の熱が体にこもっている。
『熱がある、熱がある、あなたは不調、絶不調……』
「やめろぉ……」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
