馬鹿野郎 ページ46
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地方での舞台公演が千穐楽を迎えて東京に帰る。今回はシングルキャストだった。休演日に日帰りしていたものの公演期間中の約2週間、名古屋で過ごしていた。
大好きなひよこのプリンは2匹とも買えた。新幹線の中で9月から撮影が始まるドラマの台本を読んでいると、珍しい人からLINE電話がかかってきた。あいにく新幹線だから出れない。一旦切れるのを待ち、切れてからメッセージを送る。
“今新幹線！ 出れないごめん( ; ; )”
“おっけー”
“どうしたの？ 珍しいね”
舘さんこと涼太くん。会って話さないわけじゃないしLINEもしないわけじゃない。でもSnowManのメンバー、特に若い時から仲がいい6人の中では1番連絡を取らない。年によっては互いの誕生日くらいしかメッセージのやり取りをしていないこともある。
“Aお嬢に折り入ってご報告がございます”
“なんでしょう”
涼太くんの“お嬢”呼びに引っ張られた。お嬢に相応しいとは到底思えないくらいお転婆のくせに。
“ふっかが倒れました”
『は？』
思わず声が出た。隣に誰もいなくてよかった、と思うくらいには素の自分だった。
“意識はあります”
“話もできます”
“でもしっかり熱があります”
“ふっかにAには言うなって言われたけど伝えるね？”
だから今日辰哉くんは俺の家に来ない方がいい、とLINEを送ってきたのか。地方から帰ってくると絶対に俺の家に来てほしい、もしくは俺が行く、と寂しがり屋全開なのにおかしいと薄ら思っていた。
“報告ありがとう”
“ちなみに熱はどれくらい？”
“39.2℃”
またしても声が出そうになる。なかなかの高熱だ。
“元々体調悪かったみたい
仕事に穴開けたくなくて体温計無視したらしい”
“最終的に立ち上がれなくて照と介抱して帰ってきた”
“ふっかに馬鹿野郎とお伝えください”
“仰せのままに”
私の前では普通の男の子に戻る涼太くんがロイヤル舘様としてメッセージを送ってくれるのは、きっと私の心配を和らげようとしているからだ。
“コロナではないんだよね？”
“違うよ”
“疲れとストレスらしい”
きっと涼太くんと照が病院の付き添いまでしてくれたのだろう。体調を崩した時、辰哉くんは2人に度々お世話になっているという。今回もまた2人のおかげで命拾いをした。それでもやっぱり心配は尽きなかった。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
