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「おっ、なんか楽しそうな話してんじゃん！」
「佐久間うっせっ」
照に悩みを聞いてもらっていると、佐久間と気怠げな翔太が楽屋に入ってきた。翔太はニット帽のてっぺんを引っ張って脱ぐ。色が抜け、ボサボサになった髪の毛を雑にかきあげる。
今日は3月から始まるYouTubeチャンネルの初めての企画会議が行われる。
「2人で何話してたの？」
佐久間さんにも教えなさい、と佐久間が丸っこい目をキョロキョロさせる。
「んー？ 恋バナってやつ？」
その瞬間、翔太が分かりやすくニヤけて顔を背けた。
「恋バナかー。照に好きな人でもできたの？」
「違う違う。ふっかね、ふっか」
「えええ！？」
地響きのように大きな叫びが会議室に響く。SnowManで1番小さいくせに佐久間の声は1番デカい。
「佐久間、驚くにはまだ早いぞ」
「え、まだ驚くことがあるの？」
「こいつが好きになったの藤やん、藤井A」
とうとうニヤけを隠さなくなった翔太は俺に許可もなく佐久間に告げた。
「うえええ！？」
そして再びデカい叫び声が会議室に響いた。
「マジで！？ 本当に！？」
「佐久間マジでうるせえ。……でもAが好きなのはマジ」
呆気に取られた佐久間は全身から力が抜けたようでふらりと椅子に腰かけた。
「いやぁ、ビックリだねぇ……」
きっかけは何なのよ、と今度は内側から滲む好奇心を隠すことなく佐久間は俺に向かって身を乗り出した。
「大ちゃんは見てるよ、ふっかが恋に落ちた瞬間」
「俺が？」
「魅力ゼロ、マイナス以下。今のふっかとは付き合いたくない」
これがきっかけなんだって、と照も厳つい顔をふにゃふにゃに和らげて微笑む。
「ああ！ あの時ね！ ……え、あの時？」
表情がよく変わる男だ。佐久間はニヤけたかと思えば戸惑いながら机に肘をつく。
「あんなにけちょんけちょんに言われて好きになったの？ お前」
「逆に人生であれだけ言われてこなかったから好きになったんだよ、俺は」
「逆に？」
関わったほとんどの女の子から深澤くんと付き合いたい、付き合えないなら遊びたいとさえ言われ続けてきた。でもこれまでとは真逆の反応が恐らく1番仲のいい女親友から10年近く経ってもたらされた。
「俺あの時ただ怒られただけじゃなかっただろ？」
「そうだっけ……？」
「お前さぁ……、そこだけ切り取るなよ」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
