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Aは俺を男として見ていない。厳密にはやけに親しい男の友達としか思っていない。
「照、相談があるんだけど」
片っ端からメンバーに電話をかけて誘ったところ、照と佐久間が暇だったようで受け入れられ、2人での食事は泡と消えた。自分としては勇気を出して誘ったつもりだったからショックを受けている。
「ん？ どうしたの？」
照も佐久間も、そして2人きりにならないように気遣うAも悪くない。それ故にやるせない気持ちの置き場所がない。モヤモヤは考えれば考えるほど増していく。
「藤井Aが手堅すぎて俺、心が折れそう」
「マジで？ ふっかが？」
「おう……」
俺の中でAへの想いが芽生えた時、俺が最初に頼ったのは照だった。
「早くね？ まだ1ヶ月じゃん、気づいてから」
「そうなんだけどぉ……」
照は俺以上にAを知っている。これぞまさに親友と言った感じで、お互いに家族に近い存在として扱っているようにも見える。同じように俺以上に俺を理解している。
「今までの女の子とはぜんっぜん違うのよ……、あの子」
「うん」
「今までの子達はさ、俺がご飯誘ったら大喜びよ。こっちが食われるんじゃないかってくらいガツガツしてた」
このチャンスを逃すまいと俺の好みに合わせてボディラインが強調された服装をしてみたり、俺の1つひとつの話に可愛らしいけどオーバーすぎるほどの反応をしてみたりと、明らかに俺に気に入られようと必死さが伝わってきた。
でも俺はそういうのを見ると冷めていく。どんなに気になる子でも氷水に放り込まれたように冷める。だから都合のいい女の子、体だけの付き合いを持つ子だけは尽きなかった。
「でもサエちゃんもそういうタイプじゃなかった？」
照の言う通りだ。週刊誌に撮られた相手は恋愛禁止の掟を破ってまで想いを告げ、俺も嫌いじゃないから付き合った。
「お前超好きだったじゃん」
「……若かったんだよ、あの時は」
スリル満点の恋愛は楽しくて仕方がなかった。
相手が俺を本気で好きでいてくれるのが伝わってきたし、俺も彼女と2人で過ごすうちに本当に好きになってこの時間が一生続けばいいのに、と帰るのが名残惜しいほど好きになった。彼女を感じたくてお揃いのアクセサリーをファンが見ている場所でも身に付ける。
呆気なく終わったけれど本気で好きだった。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
