この景色をあなたと ページ36
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透き通った青い海に大きく広がる青空。気温は高いけれど日本ほど湿度が高くないから涼しく感じられる。俺が今、ハワイで見ている1つひとつの景色を近い将来Aと2人で見たい。夏休みと題した仕事中に俺は漠然と考えていた。
Aがアメリカ旅行に一切生存確認を俺に送ってくれなかったのなら、俺は自分の安否を送りまくる。もういいから、と苦笑いを零しそうなくらいにハワイの海と空をバックに自撮りして、LINEに送り付ける。
“暇なの？”
稽古の休憩中だろうか、ようやく既読がついてメッセージが返ってくる。
“暇じゃない❗️わら”
“余裕はあるぜ😚”
“それを暇と言います🙄🙄🙄”
“構ってください❗️❗️❗️”
“やだ😮💨😮💨😮💨”
ホテルに戻ってきて暇になった俺はLINEを通してAにダル絡みを仕掛ける。構いたくない、なんて言うならこっちにも作戦があるってもんよ。
今度はテレビ通話を繋ぐ。少し間を置いてAは応じてくれる。
『もー』
「かっこいい彼氏様とテレビ通話してるのにもーはねえだろーが」
『彼氏は分かるけどかっこいい……？』
「疑問符付けるんじゃないよ！」
まったく、今をときめく(ときめいているはずの)アイドルにそういう弄りをするのはAくらいだ。バラエティ班として芸人扱いされることはあれど、本物の芸人さんでさえも一応かっこいいと認めてくれるのに。
『ハワイどう？ 楽しいでしょ？』
「うん、めちゃくちゃ楽しい」
俺達が付き合う前、Aはハワイへ旅行したことがあるらしい。朝ドラの撮影が終わって少し休みを貰った時に1人異国の地を訪れていたのを知らされ、心から驚いたものだ。
「だからさぁ」
『うん』
「次に行く時はお前と一緒に行きたいな、プライベートで」
今回行けなかった場所、俺が行ってみて楽しかった場所をAと共有したい。ハワイに限らず、互いに時間を作って国内や国外にある沢山の観光地を回りたい。俺の密かな夢だ。
「絶対行こうな。今から計画立てて来年には行きたいくらいよ、俺は」
ハッとしたAはそうだね、と微笑んで頷く。
『じゃあ来年の夏に行きますか』
1年かけて計画しようか、とAは本気の目をした。
「うぇ？ マジで？」
『冗談だとは受け止めないよ？』
「冗談ではねえけど話が早すぎるのよ」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
